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法テラス江差通信

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北海道奥尻町

■ヒグマの恐怖
先日、よく通行する厚沢部~八雲線で熊が出たというニュースを見たのですが、ヒグマは怖いと聞いていたので戦慄が走りました。奥尻島には熊はいないそうですね。奥尻島では安心して散策・ドライブができそうです。
さて、そんな熊の出没情報を聞いたある弁護士がこんなことを言い出しました。「熊が向かってきたときに(車で)轢いたら正当防衛になるのでしょうか。」
正当防衛。皆さんも一度は耳にしたことがあると思います。「急迫不正の侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。(刑法第36条1項)」通常であれば罪になる行為も、違法性がないとされて罰せらない、という規定です。典型的には、誰かから襲われたときに、自分を守るためにその襲ってきた人を傷つけてしまう、というケースです。しかし今想定されている相手は熊。しかも野生動物です。正当防衛などの話になる余地があるのでしょうか。
そこで話題に上がったのが鳥獣保護法です。鳥獣保護法第8条では「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(略)をしてはならない。」と、原則として損傷するような行為はしてはいけないと定められています。そしてこの規定に違反した場合に一年以下の懲役または百万円以下の罰金が定められています。そして、ヒグマは鳥獣保護法の対象となる鳥獣です。
と、すればヒグマに遭遇し、向かってきたときに轢いてしまうと原則として罪が成立します。しかし、場合によっては正当防衛が成立する余地がある…といえそうです。一安心、と思ったのは私だけでしょうか。当然ですが「急迫不正の侵害に対して」なので、熊から何もされそうにもないのに「これ幸い」と傷つけるのはダメですよ。
しかしそもそもヒグマの力強さの前には車も意味をなさないかもしれませんね。ヒグマを見かけたらやはり静かに退散するのがよさそうです。

(法テラス江差 弁護士 松田明子)

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