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青苗遺跡で発見された勾玉などの玉類と埋葬された人物像について[前編]

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北海道奥尻町

教育委員会では、令和4年度に1年間かけて取り組んだ「勾玉総括プロジェクト」について、このたび無事に報告書を刊行しましたので、その概要を簡単にお知らせします。
これは、昭和51年(1976)~同53年(1978)にかけての遺跡調査で発見された「墳墓」の副葬品として埋められていた丁字頭勾玉など玉類と鉄刀及び人物像について、専門家による詳細な検討結果を報告書にまとめて刊行したものです。
この調査は、奥尻島内で初めての大規模な遺跡調査で、縄文時代前・中期と擦文時代の文物が見つかっていましたが、報告書の作成が不十分で詳しい状況が判らないままとなっていました。それでも、著名な考古学者である森浩一(同志社大学教授)さんに「五指に入る傑物」と評価したヒスイ製の丁字頭勾玉の優品が出ていたことから、考古学の専門家の間で注目が集まっている状況でした。
今回は、翡翠丁字頭勾玉、ガラス玉、水晶丸玉などについて大賀克彦さん(奈良女子大学)、ガラス玉の成分分析について田村朋美さん(奈良文化財研究所)、鉄製の大刀について菊地芳朗さん(福島大学)、墳墓の様子について小嶋芳孝さん(金沢大学)に分析をお願いし、あらためて検討してもらいました。

■[出土品の概要]
○玉類
・翡翠丁字頭勾玉 ヒスイ製 全長50.20mm、幅21.55mm、質量52.3g 1個
・水晶切子玉 水晶製 全長28.80mm、幅1.800mm、質量12.7g 1個
・水晶丸玉 水晶製 直径9.30mm~11.40mm、厚さ8.15mm~10.80mm、質量0.9g~1.9g 29個
・ガラス丸玉 コバルト着色のガラス製 直径7.66mm~12.75mm、幅7.68~16.77質量1.1g~2.5g 14個
・滑石丸玉 滑石 直径7.75mm~10.05mm、厚さ11.45mm~13.55mm、質量0.9g~1.6g 3個
※玉類には破損品、融着品が多いことから、現存値を測っている個体もある。

○鉄器
・大刀 鉄製 全長38.2cm、幅3.4cm1点

■[出土品に対する見解]
○玉類
・勾玉は3世紀後半~4世紀半ばに畿内かヒスイ原石産地の新潟県姫川流域で制作され、ながく伝世してきたもの。大型で状態が良い。
・水晶丸玉は8世紀~9世紀に畿内の都や寺院などで見られ、大変希少価値のあるもの。
・水晶丸玉は広く流通するものではなく、入手先は都城周辺に限定されるので、島の在住者が朝貢のため、または渤海使に同行して都まで行って持ち帰ったのではないか。
・ガラス玉は6世紀半ば~7世紀中葉に国内で二次加工された大型品だが、熱を受けて変形。
・ガラス玉はコバルトで紺色に着色された植物灰タイプのソーダガラスを主要素材として巻き付け法によって製作された。
・ガラス玉は玉類が豊富に副葬される「末期古墳」のある東北北部の太平洋岸から、水晶製切子玉や滑石製丸玉とともに島に流入した可能性が高い。

○鉄器
・大刀は本州の古墳時代~古代の墳墓から出土する大刀と大きく変わらない。
・秋田城跡か郡山遺跡、多賀城(ともに宮城)等で造られた7世紀後葉の前後1世紀頃のもの。
・秋田からであれば日本海ルートから、郡山や多賀城からであれば太平洋ルートからもたらされた。

また、墓の構造、埋められた年代や人物像については、先生方の間で見解が分かれました。つづきは7月号の後編でお知らせします。刊行した報告書は海洋研修センター図書室にありますのでぜひご覧ください。

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