■相続放棄の検討時に気を付けること
今回は、相続放棄を検討しているときに気を付けるべきことに焦点を当てたいと思います。
相続人が、被相続人の一切の権利義務(借金を含む)を承継することを単純承認といいます。民法921条には、単純承認をしたものとみなされる一定の事由が規定されております。具体的には、(1)相続財産の全部又は一部を処分したこと、(2)相続放棄等の選択を熟慮するための期間内に相続放棄等をしなかったこと、(3)相続放棄等をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録に記載しなかったことの3つの事由が規定されております。
(1)の「処分」とは、裁判例によれば、相続放棄等をする前になされたものに限定されるようです。ここでいう「処分」とは、財産の現状や性質を変える行為のことをいい、被相続人名義の不動産の取り壊しなどが典型的な行為になり得ます。また、被相続人名義の預金口座を解約するような行為も基本的には処分になり得ます。もっとも、「処分」にあたるかどうかに関する裁判所の判断は、行為態様や客体の価値などによって様々ものがあります。
(2)の熟慮するための期間とは、従前から述べております、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内のことをいいます。これも事例により様々な判断があり得ますが、基本的には相続の事実を知ってから3か月が選択の締め切りと考えた方が良いです。
(3)は、相続放棄等をした後に相続財産を隠したりするような背信行為をした場合についての規定です。相続放棄等の後に行われた行為も対象となります。
以上のことからすれば、特に相続放棄を検討する際は、相続財産を勝手に処分するようなことは避けた方がよいです。基本的には、相続放棄をするのであれば、手をつけずにそのままの状態にしておいた方がよいと思われます。
もし、判断に困るようなことがありましたら、早めに弁護士などに相談をすることをおすすめします。
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(法テラス江差 弁護士 樋口 直久)
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