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市長コラム 夢かなうまちおびひろ

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北海道帯広市

■人と木と森と
帯広市長 米沢則寿
以前このコラムで、私の好きな絵本「木を植えた男」を紹介したことがあります。木は、日差しの強い日には日陰をつくり、風の強い日には風よけとなり、燃やせば暖にもなります。木が大きく成長するまでには長い年月が必要で、その恩恵を享受できるのは次の世代かもしれませんが、男は一生をかけて荒れ地に木を植え続け、緑の森としてよみがえらせる物語です。見返りを求めず、未来を信じて行動し続けることの崇高さに感動したものです。
13年前に市長を志し、改めて帯広市のことを調べた時に、真っ先に私の目に飛び込んできたのは「帯広の森構想」でした。農地として開拓した土地に、街を囲むように木を植え、再び森をつくるというプロジェクトで、市民がみんなで木を植えたと知った時、あの絵本と重なり感銘を受けたことを思い出します。
歴史的に見ても帯広は木や森との関わりが深く、かつて日本最大級の林業集落と言われた三国峠手前の三俣盆地から切り出された木材は、川に浮かべて運ぶ流送や森林鉄道を経て帯広に集積され、鉄道の枕木や建造物に使用されるなど、開拓時代の人々の暮らしや街の成長を支えてきました。
木は人々の生活に欠かせないものですが、実は自然のまま放っておいても元気に育つものではありません。伸びきった枝や葉は、太陽の光を遮り木々の成長を妨げます。枝払いや間伐を行うなど、人の手を入れることで光が差し込み、長い年月をかけながら、生き生きとした木が育ち、鳥や昆虫も集まる多様性のある森へと成長していきます。人も木も互いに互いを必要としており、私たちも木や森のことを理解し、より良い関係性を築いていくことが持続可能な未来につながるものと考えます。
帯広市では、子どもの頃から木と身近にふれあい、木や森との関わりを考えながら豊かな心を育むため、木育を推進しています。昨年から児童会館や保育所に、地域材を利用した木製遊具などの設置を進めているところです。多くの子どもたちが木製遊具に触れ、遊ぶ楽しさだけではなく、木が持つ温もりや優しさを直接自分の手や足で感じ、成長してくれるものと期待しています。
帯広の森のプロジェクトは、来年50周年を迎えます。木を植えた人たちが、私たちに残してくれた森を散策しながら、木や森との関係に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

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