■十勝で見つかった五所川原産須恵器
写真・文/百年記念館 森久大
昭和63年に行われた発掘調査で、音更町十勝川温泉1遺跡から須恵器大甕(すえきおおがめ)の破片が見つかりました。須恵器とは、5世紀頃に朝鮮半島から導入された技術によって古墳時代中期~平安時代に生産された焼き物です。登り窯を使い高温で焼き締められた須恵器は、硬質で液体の保管容器としても優れています。北海道で見つかる須恵器大甕は、北海道で自製できない酒を本州から運び込む際に使った容器ではないか、と想像したくなります。
発掘調査報告書では単に「須恵器」と報告されたこの資料ですが、改めて観察してみると、色調の特徴などから、9世紀末~10世紀中頃に青森県五所川原市で生産されたものであることが分かりました。北海道内で五所川原産須恵器が出土した遺跡は60カ所ほどありますが、十勝での出土例はこれまで知られていませんでした。
律令国家による支配が東北北部にまで及ぶ中で、北海道では10世紀頃から本州産の鉄製品と五所川原産須恵器の流通が急速に拡がります。古代の北海道に暮らした人々は、本州で珍重された毛皮やワシ羽などとの物々交換によって、これら本州の産物を手に入れていたと考えられています。このような古代の流通網が十勝にも及んでいたことを示す、貴重な出土品と言えます。
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