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市長コラム 夢かなうまちおびひろ

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北海道帯広市

■アドベンチャートラベル
帯広市長 米沢則寿
日本における旅行といえば、新しい服やカバンを一式揃え、短い時間で計画的に観光名所を巡り、その合間にショッピング。このようなスタイルで非日常を楽しむという行程がこれまで多かったように思います。一方ヨーロッパでは、普段と同じ服装で出掛け、長い日数や時間をかけてその土地の歴史や文化に触れ、家族でゆったりと深く語り合うような旅行形態が以前から多く見られます。私もロンドン滞在時代には、教会や運河、ストーンヘンジ、中世の城などを訪れ、家族と共に幾千年もの時間の流れに裏打ちされた歴史や文化に接したものです。
最近「アドベンチャートラベル」という言葉を耳にするようになりました。これは、自然の中で健康的に活動し、地域の人と触れ合いながら歴史や文化を学ぶなど、さまざまな体験を通じて自分を内面から磨き高めることを目的とした旅行のことで、欧州や米国、豪州で好まれている旅のスタイルです。
十勝・帯広は、アイヌの人たちが暮らすこの地に依田勉三率いる晩成社が入植してから、いまだ140年しか経過しておらず、その歴史的な厚みはヨーロッパなどと比べようもありません。しかしながら十勝・帯広の先人たちは、このわずかな時間の中で、うっそうとした森を切り拓(ひら)き、厳しい自然と折り合いを付けながら、日本有数の食糧基地と言われるまでの広大な農地とさまざまな機能が集まる街をつくり上げてきました。
「国の光を観る、もって王に賓(ひん)たるによろし」が語源と言われる観光。「光」とはその地域の優れたもの、価値あるものを指します。歴史は、時の流れの長さに価値が置かれることが一般的ですが、一定の時間の中で積み重ねられてきた人々の営みに価値があるとするなら、その密度というのも歴史の価値と言えるのかもしれません。多くの困難を乗り越えながら、わずか140年で大きな変化を生み出した十勝・帯広の歴史・文化も、世界に誇れる「光」として発信していけるのではないでしょうか。
9月11日から、世界60カ国800名の旅行関係者やメディア関係者が参加するアドベンチャートラベル・ワールドサミットが札幌で開催され、北海道、そして十勝・帯広が持つ魅力に注目が集まります。アイヌの人たちが作り上げてきた文化や自然、食、そして先人たちの前向きな行動。ここに住む私たち自身が地域の歴史・文化に価値を見いだし、発信する機会にしていきたいと考えています。

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