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新春対談 十勝・帯広を楽しむ。(1)

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北海道帯広市

■3人の出会い
市長:
十勝・帯広では、基幹産業である農業を基盤に、食や農、自然などの地域の魅力や価値を活かし、新たな「しごと」や域外からの「ひと」の流れを創ることが必要と考えました。そして、中核となる取り組みとして、全国からお招きした「革新者」と呼ばれる創造的な起業家と、十勝・帯広で起業を目指す人材とが交流することで新たな事業を生み出す「とかちイノベーションプログラム(以下、TIP)」を進めてきました。
そこで、今年TIPが10年目を迎えるにあたり、このプログラムを企画・開発された齊藤さんと、革新者の一人として参加いただいた山井さんと3人で、対談(鼎談(ていだん))をしたいなと思い、お声掛けをさせていただきました。
まず、齊藤さんに、このプログラムを、十勝・帯広で始められたきっかけについて、当時を振り返っていただきたいのですが。
齊藤:
イノベーションプログラムを始める前に、全国で100人の革新者をネットワークでつなぐ活動を3年間続けていました。革新者は、ビジネスモデルも生き方も、従来の経営者とは違っていて、とても刺激的でした。こういう人たちを地域にも増やせたら、衰退する地域を救ってくれるのではないかと思い、地域に革新者を生み出すためのイノベーションプログラムを開発しました。
当時、帯広市の職員向けの講演を米沢さんから依頼され帯広に来ていたのですが、そこで米沢さんから「そのプログラム、十勝で最初にやって欲しい。」と言われ、瞬く間に地域の金融機関トップの協力も得られ、実現へと向かいました。つまり、スタートできたのは自分の力ではなく、米沢さんや金融機関トップの皆さんが「やろう」と言って、協力してくださったからなんです。
市長:
ずいぶん謙遜されていますが、このTIPは、齊藤さんなしでは考えられませんでした。
人にも恵まれました。他の金融機関や帯広畜産大学の参加もあり、たくさんの支えがあってスタートできたのですが「革新者」ってどんな人だろうと、皆さんが興味津々だった中で、2015年に山井さんに参加いただきました。十勝・帯広、そしてTIPに対して、どんな印象をお持ちでしたか。
山井:
もともと十勝には、キャンプや釣りなどのアウトドアでたびたび来ていたので、十勝のフィールドは「ワールドクラス」だという印象を持っていました。だから、TIPに呼んでもらえたのが、とても嬉しかったです。
参加させてもらって感じたのは、特に若いメンバーが非常に元気で、さすが「フロンティアの末裔(まつえい)」だなと。十勝・帯広の地へやって来た開拓者たちの末裔は、どこか大陸的で明るく、他の土地とは明らかに違うエネルギーを感じました。
市長:
ありがとうございます。今「フロンティアの末裔」と言う、ゾクッとするような言葉を使っていただいたのですが、物語を紡ぎ、語る素材を持っている地域と言うのは、とても幸せだと思います。
先程「ワールドクラス」といったお話をいただきましたが、アウトドア・フィールドとしての、十勝が持っている価値や可能性など、改めてお聞かせ願えますか。
山井:
十勝以外にも素晴らしいアウトドア・フィールドは世界に幾つもあるのですが、どこも空港から遠いです。例えば、世界初の国立公園に指定されたアメリカのイエローストーンも、最寄りの空港からキャンプ場まで、車で数時間もかかります。十勝の場合は、空港のすぐ近くにポロシリのキャンプ場があり、車で30分も走れば着きますよね。こういうフィールドは、他にはあまりないです。
市長:
なるほど。
山井:
それから、僕はキャンパーであり、フライ・フィッシャー※1なので、その視点で言うと、フィールドに求めるものは、世界で一番美しい川とマスが居る場所です。アメリカのオレゴン州は、世界的に人気があるアウトドア・フィールドですが、十勝の方が、川もマスもずっと美しいと思っています。
市長:
それはすごい!
山井:
あとは、ポロシリのキャンプ場の芝は、日本のキャンプ場の中で一番良いですね。普通はマットを敷いて、その上に寝袋を敷きますが、あの芝のふかふかさは、マットが要らない。僕の背中が喜んじゃう(笑)。
今、日本の子どもたちは、デジタル社会にさらされていて、リアルな体験をあまりせずに育ってしまうことが多いので、十勝・帯広の子どもたちには、ちゃんと自然に触れながら、育っていって欲しいなと思っています。
その意味でも、十勝には良いキャンプ場や遊べるフィールドがあり、アウトドアを楽しむには最適な地域なので、発信の仕方によっては、世界的なアウトドア・フィールドとして、もっと支持されていくのではないかなと思います。

◆(株)野村総合研究所未来創発センター主席研究員
齊藤義明(さいとうよしあき)
北海道大学卒、1988年野村総合研究所に入社。ワシントン支店長、コンサルティング本部戦略企画部長などを歴任。100人以上の“革新者”たちとのネットワークを持ち、イノベーション・プログラムの開発者として、第1号の十勝を始め、全国を飛び回っている。主な著書に『日本の革新者たち』(ビー・エヌ・エヌ新社)など。

◆とかち・イノベーション・プログラム(TIP)
十勝の“稼ぐ力”を創り出すことを目的に、2015年から始まった“混血型”事業創発プログラム。創造的なビジネスを展開する全国の“革新者”と、十勝の事業者・起業希望者が交流し、議論を重ねることで、新たな事業創発を呼び起こす。2024年度は第10期目を開催予定。

◆(株)スノーピーク代表取締役会長兼社長執行役員
山井太(やまいとおる)
明治大学卒、外資系商社勤務を経て、1986年に父が創業したヤマコウ(現スノーピーク)に入社。アウトドア用品の開発に着手し、オートキャンプのブランドを築く。1996年に社長に就任し、社名を「スノーピーク」に変更、「人生に、野遊びを。」をテーマに事業展開している。自身も年間60泊近くをキャンプで過ごすアウトドア愛好家。

◆スノーピーク十勝ポロシリキャンプフィールド
市街地から南西へ約35kmの場所に位置するポロシリ自然公園内にあるキャンプ場。2017年4月、指定管理者制度により、スノーピークが運営を受託。冬季間も利用でき、直営店も併設している。同社のキャンプフィールドとしては、新潟、大阪、大分に次いで4カ所目。

※1 フライ・フィッシャー
欧米式の毛針であるフライを使って釣りをする人。

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