■「選択される」まちづくり
帯広市長 米沢則寿
帯広市は今年9月、東京都武蔵野市にキャンパスを構える成蹊(せいけい)大学と連携協定を締結しました。「本物に触れる教育」をコンセプトに自然や現実社会を教材とした授業を行ってきた成蹊大学が十勝・帯広を視察した際、地域の可能性や事業者の取り組みに共感・共鳴されたことがきっかけで今回の連携協定につながったものであり、学長と協定書を交わしながら改めて前向きな取り組みと出会いの大切さを感じました。
今後、市は学生が十勝・帯広について学ぶ授業や企業訪問などのフィールドワークに協力していくほか、大学側には学生の十勝・帯広への就職促進などに協力いただく予定でおり、取り組みの発展に期待しているところです。
昨今、国全体の人口減少や東京一極集中などの流れの中、特に地方から都市部への若者の流出がより一層顕著になっています。全国の自治体でこうした傾向に歯止めをかけるべく取り組みを進めていますが、そもそも若者たちはなぜ大都市に惹(ひ)かれるのでしょうか。
10代、20代は進学や就職といったライフイベントが重なる年代であり、より高い給料を得たい、コンサートやイベントなど、大都市ならではの生活や刺激を楽しみたいといった理由のほか、地元や親から離れて暮らしてみたいと思う人もいるかもしれません。若者の視点で考えてみると、地方から大都市に出ていくことはある程度自然な動きのようにも感じます。
では、若者たちにとって地方は本当に大都市よりも魅力がない所なのでしょうか。大都市特有の猥雑(わいざつ)さや混乱、そこから生まれる強い刺激は確かに若者にとって魅力的かもしれません。一方で、地方においてより感じられる快適さや秩序、自然なども人が幸せに生きていく上で大切な要素です。
近年、交通ネットワークや情報ネットワークが発達し、仕事を含め大都市でなければできなかったことが地方でもできる環境が整いつつあります。そうした時代においては、仕事や生活の利便性、緑や自然など、都市と地方の魅力がうまく融合し、バランスの取れている地域に若者たちは集まってくるように思います。
若者たちが「人生とその豊かさ」について考える時期が来た時、十勝・帯広を暮らしの場や活躍の場として選択してもらえるよう、彼らとの接点を大切にしながら前向きな人たちが集まるバランスの取れた居心地のよいまちづくりを進めていきたいと思います。
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