■帯広の森ー次の50年へー
帯広市長 米沢則寿
昨年5月、帯広の森にある「はぐくーむ」で開催された「森のこどもらんど」というイベントに参加しました。その日は、あいにくの雨でしたが、子どもたちは森の中を走り回り、泥だらけになりながら外遊びをするなど、全力で楽しむ姿がありました。それをうれしそうに見ていたお母さんの一人は地元の方ではないようで、市街地からすぐ近くに、このような環境があることに、とても感激しておられました。
帯広の森は、造成開始から今年で50年を迎えます。経済が右肩上がりに成長し、人口の増加とともに都市が拡大。誰もが弛たゆまぬ成長と、その先に幸せがあると信じていた50年前、帯広市は、緑と森に将来の資産としての価値を見出し、一度切り拓ひらいた土地に再び木を植え、これまで育んできました。
近年、SDGs(エスディージーズ)が広がりを見せ、緑や森などの価値が世界的にも改めて注目されています。現在、メーカーや商社、流通業など多くの企業が、国内外で森づくりに取り組んでいますが、緑豊かな帯広の森がまちを包んでいる今の姿を目にすると、50年も前からSDGsの時代を先取りし、森づくりを進めてきた、その先見性と行動力に改めて感銘を覚えます。
当時の人たちは、なぜ森をつくろうと考えたのでしょうか。昭和46年に策定された第二期帯広市総合計画にこんな一文が記されています。「二十万市民が、緑と太陽と空間に恵まれた環境の中で、未来の夢を描き、風土に根差した文化を創造するにふさわしいまちづくりを百年の大計として進めていくため、帯広の森の建設を市民ぐるみで推進する」。森を通じて、市民が緑と良好な関係性を築き、豊かな日常を送る。そうした関係性が、帯広の文化として高められていく未来の姿を思い描いていたのかもしれません。
森の中で散歩やジョギングをする人、動植物を鑑賞する人、体育施設や交流館を利用する人、冬にはクロスカントリーを楽しむ人など、それぞれが心地よい憩いの「時」を過ごしています。ここに暮らす人たちの日常には森との接点がある。その風景は、文化や豊かさを象徴するものであり、様々な人が森に関わることで、森の価値もさらに高まるように思います。
造成から半世紀を迎えた今、当時の人たちが森づくりを始めてくれたように、私も皆さんと50年後の市民の豊かな暮らしを想像しながら、森との関係性について考えていきたいと思います。
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