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地下の研究現場から 第40回-鉱物を分析すれば長期的な物質の動き方が分かる!?

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北海道幌延町

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター
モグ太くん:私たちの行っている研究について、広くご理解いただくために幌延町広報誌「ほろのべの窓」の誌面をお借りして町民の皆さまをはじめ、ご愛読者様に研究内容についてご紹介させていただきます。

高レベル放射性廃棄物の地層処分では、廃棄体から放出された放射性物質が地下深部でどのように動いていくかを数万年先まで評価する必要があります。幌延深地層研究センターでは、地下深部の岩盤中の物質の動きかたを調べる試験(2023年1月号に掲載)と、これらの試験結果をもとにコンピューターシミュレーションによって将来の物質の動き方を予測する方法の研究を行っています。短期的な試験で得られたデータをもとに将来の長期的な物質の動き方の予測を行う場合は、過去から現在に至るまでの物質の長期的な動きかたを観察して、その妥当性を確認することが重要となります。
例えば、地層処分では、天然環境中にも広く存在し水に溶けやすく半減期*が長いセレン(Se)という元素が、安全性の評価上重要な元素のひとつであると考えられており、Seの地下環境での長期的な動きを理解することで、より信頼性の高い評価をすることができます。これまでの研究では、地層が堆積してから現在に至るまで、Seがどのような鉱物にくっついているか調査を行い、地下環境におけるSeの長期的な動きを明らかにしました。幌延の岩石中に含まれる多くの鉱物は、とても小さく肉眼で観察することはできないため、電子顕微鏡などを利用して、鉱物とその中に含まれている元素を分析しました。図1では、色の濃淡で各元素が多く含まれている箇所を示しています。Seの多いところでは、鉄(Fe)と硫黄(S)も多く存在していることから、Seが黄鉄鉱(FeS2)という鉱物にくっついていることが分かりました。この黄鉄鉱の形状を詳しく観察してみると、粒径1μm(マイクロメートル:1μm=0.001mm)以下の微細な球状の黄鉄鉱が木苺状に濃集した塊として存在していました(図2)。このような黄鉄鉱の塊は、幌延の地層が堆積していた期間(約1,500万年前~200万年前)に、海水中の微生物のはたらきにより生成したと考えられており、黄鉄鉱にくっついているSeも黄鉄鉱の生成時に取り込まれ、現在に至るまで鉱物中に安定に留まっていたと考えられます。このように天然の岩石を分析することで、地下環境中での長期的な物質の動きかたについて理解することができます。
*半減期:放射性物質は放射線を出して別の核種に変わることで、時間の経過とともに量が減っていきます。元の放射性物質の量が半分になる時間を半減期と呼びます。セレンの場合、Se-79の半減期は約33万年です。

図は本紙をご覧ください。

広報調査等交付金事業

お問い合わせ先:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
幌延深地層研究センター…【電話・告知端末機】5-2022【HP】https://www.jaea.go.jp/04/horonobe/
ゆめ地創館…【電話・告知端末機】5-2772【HP】https://www.jaea.go.jp/04/horonobe/yumechisoukan/index.html

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