文字サイズ
自治体の皆さまへ

地下の研究現場から 第39回-マグマが湧水量を教えてくれる?

10/15

北海道幌延町

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター
モグ太くん:私たちの行っている研究について、広くご理解いただくために幌延町広報誌「ほろのべの窓」の誌面をお借りして町民の皆さまをはじめ、ご愛読者様に研究内容についてご紹介させていただきます。

今回は、ボーリング調査で採取したコア試料(円柱状の岩石試料)の詳細な岩石・鉱物学的分析が坑道掘削時の湧水対策につながった事例を紹介します。
火山の噴火で噴出した火山灰が海底などに堆積し、長期間にわたって温度や圧力の影響を受けて変質すると粘土鉱物が生成します。このように地層中に存在する火山灰層が変質・変形してできた粘土質なせん断帯*1は、通常の岩石の変形・変質によってできる粘土質なせん断帯と比べ、スメクタイト(膨潤性の粘土鉱物の総称)を多く含み、より連続性が高いという特性があります。スメクタイトを多く含むせん断帯に坑道を掘削すると、スメクタイトの高い膨潤性と変化しやすい粘性が原因となって、坑道内にスメクタイトが地下水とともに大量に流出してくる可能性があります。したがって、坑道の掘削前に、火山灰層由来の粘土質せん断帯の分布をボーリング調査で採取したコア試料の観察などにより把握することができれば、坑道掘削時の湧水量を抑制する対策(湧水対策)に役立つと考えられます。しかし、通常のコア試料の観察では、火山灰層由来の粘土質せん断帯と通常の岩石由来の粘土質せん断帯を判別することが難しく、湧水対策を困難にしていました。
幌延深地層研究センターでは、粘土質せん断帯のコア試料(計25試料 写真1)を顕微鏡で観察し、そのうちの9試料中にマグマが噴火時に急冷してガラスとなった物質(メルトインクルージョン 写真2)が鉱物(斜長石)の中に多く含まれていることを発見しました。このことは、これらのせん断帯が火山灰層由来のものであることを示しています。さらに、メルトインクルージョンの化学組成を分析した結果、6試料が同一の火山灰層由来であることが分かりました。これらの結果から、この火山灰層由来のせん断帯の分布を広範囲で精度よく推定することができました。さらに、この分布に基づいて坑道の配置を一部変更し、このせん断帯での坑道掘削を避けることにより、効率的な湧水対策を行うことができました。
*1:せん断帯とは、物がずれる変形(せん断変形)が集中する帯状の地質構造のことで、断層はその代表例です。

写真は本紙をご覧ください。

広報調査等交付金事業

お問い合わせ先:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
幌延深地層研究センター…【電話・告知端末機】5-2022【HP】https://www.jaea.go.jp/04/horonobe/
ゆめ地創館…【電話・告知端末機】5-2772【HP】https://www.jaea.go.jp/04/horonobe/yumechisoukan/index.html

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU