■漆器(しっき)
漆器は儀式時のお酒の容器や食器として、また日常の食器としても使われました。霊力を持つ宝物とされ、宝物が多ければ多いほど自分を守ってくれる存在が増えるので、大切にされてきました。
漆器はアイヌ民族が作ったものではなく、和人との交易や漁場での労働で手に入れたものですが、アイヌ民族は和人の使い方とは異なる使い方をしました。例えば、シントコ(行器(ほかい))を和人は食物を持ち運ぶ容器として使いましたが、アイヌ民族はお酒や貴重品を入れる容器として使いました。また、トゥキ(盃(さかずき))はお椀を天目台の上に載せたものですが、この組み合わせはアイヌ民族独自のものです。そしてトゥキの上には自分たちで作った祭具イクパスイ(捧酒箆(ほうしゅひ))を置きます。
漆器は大切に扱われてきましたが、神様たちと人間をつなぐ最も大切な道具はイナウ(木幣(もくへい))、イクパスイといったアイヌ民族が自分たちで作った祭具です。イクパスイは人間の祈りことばの足りないところを補って神様に伝えます。イナウは木を削って御幣状の形にしたもので、神様たちが最も喜ぶ贈り物であるだけでなく、人間の祈りや捧げものを神様に送り届ける働きもします。
文・写真:阪口諒(さかぐちりょう)
問合せ:生涯学習課 学芸員
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