■キハダ(シケレペ)
キハダ(シケレペ)はミカン科の落葉広葉樹で、秋になると実を付けます。キハダという和名は、外側の樹皮と内部の木質部との間にある内皮が、鮮やかな「黄色い肌」であることに由来します。
キハダは古くから生薬としても知られており、本州では樹皮から取れる黄檗(おうばく)(黄柏)が胃腸薬や湿布などに利用されてきました。また、樹皮で紙や布を染めると鮮やかな黄色に染まることから染料としても使われてきました。
アイヌ民族もキハダを様々なことに利用していました。大きく剥いだ樹皮を張り合わせて即席の川舟にしたり、家を葺(ふ)いたりする材料にしました。内皮は胃腸の調子が悪いときには、噛んだり煎じて飲んだりしました。
秋になるとキハダの実をたくさん採り、乾かして保存します。実は柑橘系のさわやかな香りと甘苦い味がしますが、山菜類、野菜類、豆類などから作るラタシケプ《混ぜ煮》などの薬味として利用したり、風邪のときに実を煎じたものを飲んだりしていました。
様々な用途に使われていたキハダは地名にも残っています。忠類の古い地図や文書にはシケレペウンナイ、シケレペウシナイという川の名前がいくつか記録されています。それはシケレペ《キハダ》ウン《がある》ナイ《川》やシケレペ《キハダ》ウシ《が生えている》ナイ《川》という意味です。かつて東宝地区を指していた「シキリブナイ」はシケレペ・ナイ《キハダ・川》が変化したものと考えられます。
※「シケレペ」の「レ」、「ラタシケプ」の「シ」と「プ」、「シケレペウシナイ」の「レ」と「シ」、「ウシ」の「シ」は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。
文:阪口 諒(さかぐちりょう)
問合せ:生涯学習課学芸員
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