北海道のはじまり
アイヌ民族はたくさんの物語を伝承してきましたが、北海道がどのようにできたのかについて語る神話もあります。帯広のアイヌ民族に伝わっていた北海道の創造神話にこのようなものがあります。
北海道は、コタンカラカムイとサマイクルと呼ばれる神様が造った。二人はモシリケシ≪土地の下手≫(A)から造り始め、モシリパ≪土地の上手≫(B)で作り終えた。そして全体を魚の形に造ったのだ。中を造って二人が仮に動かしてみたら、揺らいでひびができた。そこで、持っていた鍋や斧などの金属を溶かして、そのひびに流し込んだ。それが今、山から出る金属である。
十勝の創造神話では、コタンカラカムイとサマイクルが一緒に北海道を作ります。特にサマイクルは人間に生活の知恵などを伝えた尊い存在とされ、各地にその足あとや持ち物などが岩や山になって残っていると語られます。物語ではオキキリマという神様と一緒に登場することが多く、不心得者で力の劣るオキキリマが失敗するのに対して、優れたサマイクルが神々の恩恵を得るという展開になっています。北海道の南西部でも似た物語がたくさん伝わっていますが、南西部ではオキクルミが成功し、サマユンクルが失敗する展開になっています(オキクルミ、サマユンクルはオキキリマ、サマイクルの南西部での言い方です)。同じ神様でも、地域によって役割が違っているのです。
※(A)(B)の地図につきましては、本紙をご覧ください。
※「コタンカラカムイ」の「ラ」、「サマイクル」の「ル」、「モシリケシ」の「リ」と「シ」、「モシリパ」の「リ」、「オキキリマ」の「リ」、「オキクルミ」の「ル」、「サマユンクル」の「ル」は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。
文:阪口 諒(さかぐちりょう)
問合せ:生涯学習課学芸員
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