■神窓(ロルンプヤラ)
アイヌの家屋には神窓と呼ばれる大切な窓がありました。神窓は家の上座(入り口から見て一番奥)にあるのでロルンプヤラ(ロロ「上座」ウン「にある」プヤラ「窓」)と言われたり、カムイ(神様)が出入りする窓なのでカムイプヤラ(神の・窓)とも言われたりします。狩りで仕留めたクマ、つまりカムイを家の中に入れるときには神窓から運び入れ、儀式のときに祭具を屋内から出すときも神窓から出します(カムイと見なされていない魚などは人間が使用する出入口から家に入れます)。
また、祈り言葉を唱えるときも、火の神を仲介として祈りがほかの神々に伝わるように、神窓は開けられます。神窓は神様のための窓なので、人間が神窓から家の中を覗くことは禁じられています。
かつてのアイヌの家屋は集落ごとに建てる方向が決まっていました。日高地方では神窓とその外側にある祭壇(ヌサあるいはヌササン)は東を向いていましたが、十勝では地域によって家の向きが違っていました。それは、十勝では川の上流の方にカムイの世界があり、その方向に神窓と祭壇を向けていたからです。帯広、幕別、芽室では十勝川を、本別では利別川を基準に
して、祭壇、神窓を上流の方へ向けます。そのため、十勝の中でも地域によって家の方向が異なっていたのです。
※「ロルンプヤラ」の「ラ」、「ロロ」の「ロ」、「プヤラ」の「ラ」、「カムイプヤラ」の「ラ」、は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。
文:阪口 諒(さかぐちりょう)
問合せ:生涯学習課学芸員
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