狩勝牧場のこれまで平成30年3月に閉鎖した狩勝牧場跡地の新たな利活用の構想を、5月の議員協議会で具体的に示しました。
今号では新たな利活用の詳細や、今後についてお知らせします
◆狩勝牧場のこれまで
狩勝牧場は東京都のトヨタ自動車販売株式会社の神谷正太郎社長が、昭和43年に秋の叙勲によって勲二等を受章した記念に、地域社会のために役立つ事業をしたいと考えたことが発端となり、私財を投じて新得町内福山地区一円の農地を買収の上開設されました。
昭和46年から生乳の生産が開始された後は、施設の拡充や乳牛の増頭が着実に進められ、昭和49年には当初計画の搾乳牛100頭を達成し、牛乳出荷量も平成元年に目標の1千トンを達成するなど、事業の規模が次第に大きくなっていきました。
開設から40周年を迎えた平成22年には記念式典が行われましたが、後継者の問題や将来の経済状況から、経営の継続が難しいと判断し、平成30年3月末をもって閉鎖されることとなりました。
新得町の考えとして、土地の売却による農地の分散化や、海外資本による林地の買収などの懸念があったことから、第一次産業に必要な土地は地元の人が所有すべきという考えのもと、狩勝牧場を一括で購入することとしました。
その後は飼料の生産を目的として、新得町農業協同組合の子会社である株式会社シントクアユミルクに狩勝牧場の土地や施設を貸付けています。
▽狩勝牧場跡地の現況
貸付先:株式会社シントクアユミルク
貸付物:
(土地)農地約132ヘクタール
(施設)バンガーサイロ5基、倉庫3基、車庫1基
貸付期間:令和5年4月1日〜令和10年3月31日(5年更新)
◆新たな利活用
狩勝牧場が閉鎖してから現在までの間、「農産・畜産振興」「地域活性化」に繋がる有効な利活用について検討してきました。
検討を進める中で、過去に狩勝牧場と共に収穫作業や共同利用を行ってきた有限会社北広牧場から、新たな利活用について提案があり、慎重に協議を進めました。
(1)狩勝牧場跡地の全ての土地及び施設が、有効活用される計画であること
(2)農業実習生の雇用意向を確認できたこと
(3)「畜産振興」「地域活性化」に繋がる利活用が期待できるコンセプトであること
北広牧場の提案に、上記の(1)〜(3)が盛り込まれていることから、今後の利活用に相応しい計画と判断し、狩勝牧場の利活用を後押しすることとなりました。
▽利活用の構想
[POINT]「狩勝牧場」と共に収穫作業や共同利用を行ってきた「北広牧場」が有効的に活用する
[POINT]JR新得駅から車で約10分、スマートIC予定地から車で約20分程度の立地条件を活かし、観光牧場として「畜産振興」のほか「地域活性化」に寄与する牧場を目指す
▽牧場のコンセプト
[01 POINT]コスト低減型の放牧酪農にチャレンジする
〜現状の否定ではない、新たな手法の挑戦〜
(有)北広牧場 高野 淳代表取締役
「牛も人も幸せに」が第一です
物価高騰や円安により、酪農業も大きな影響を受けていますが、そんな今だからこそ、低コストで牛をストレスなく育てることができる「放牧酪農」という手法に挑戦したいと思いました。放牧酪農では、牛は自ら牧草を食べるので、人件費や飼料のコストを抑えることができますが、現在使用している飼料よりカロリーが低くなりますので、1頭あたりの乳量は減ることが想定されるなど、良いことばかりではありません。
牛を育てるどの手法においても、メリット・デメリットは必ずありますが、放牧酪農も現状の手法も「牛も人も幸せに」という、北広牧場で掲げている経営理念は共通しています。酪農を通じて地域社会を豊かにし、次世代に繋がる新しい酪農をこれからも追及していきたいです。
≫放牧酪農とは
乳牛を牛舎で飼わず、牧草地を自由に歩き回りながら育てる方法です。牛たちは牧草地内で生育され、お腹が空けば自ら牧草を食すため、エサの調達やエサやりの必要がありません。その他、牛の足腰を鍛えられることや、耕作放棄地を有効活用できるなど、省力化・低コスト化に有効な飼育法として注目されています。ただし、牧草地の整備に手間と費用がかかることや、牛の脱走や捻挫のリスク、季節によって乳成分・乳量が変動する可能性もあるため、メリット・デメリットの両面を理解する必要があります。
[02 POINT]景観を活かし、牧場の魅力や価値を発信する
〜牧場の良さも課題も牧場に来て五感で感じる〜
(将来的にファームツアーや農家レストラン、宿泊施設なども視野に)
[03 POINT]動物と人との共存を知り、酪農業の在り方を考えていく場とする
〜人と動物が一緒に暮らし合う「共存」の環境づくり〜
▽利活用の進め方
今後のスケジュール(予定)
令和6年度
・農地賃貸(約13ha)
・(1)搾乳牛舎の賃貸
・牧柵、牛舎改修(北広牧場による整備)
・老朽物品の更新(町による整備改修)
令和7年度
・農地賃貸(約12ha)
・(2)育成牛舎の賃貸
・(3)付帯施設の賃貸
令和8年度以降
・農地賃貸(約15ha)
・(4)事務所(5)住宅施設の賃貸
・施設改修(北広牧場による改修)
※レストラン、加工施設などへの改修を予定
※現在、狩勝牧場跡地の農地の全て、施設の一部をシントクアユミルクに貸付けており、今後段階的に北広牧場へ貸付ける。将来的には農地92haをシントクアユミルクが、農地40haと牛舎等施設は北広牧場へ貸付け、倉庫等の付帯施設は共同で利用する予定。また、北広牧場が借り受ける予定の、土地40haの見合い分を、今後北広牧場からシントクアユミルクへ貸し付ける予定。
(産業課畜産係【電話】64-0525)
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