▽「愛すべき街」旭川
市長:「ものづくり」と「まちづくり」は、皆で協力してより良いものにしていく、という部分で共通点もあるように感じます。「ものづくり」のスペシャリストの加藤さんから見て、旭川市の「まちづくり」に大切な視点は何でしょうか。
加藤:長く旭川を離れていますが、思い返すといつも「愛おしい」という意味での「愛すべき街」という言葉が浮かびます。三浦綾子さんが出てきたり、牧歌的な自然や旭橋のたたずまい、公園の木々、そして冬のダイヤモンドダストや霧氷などは、盆地の旭川ならではの財産です。ここにしかない魅力をどう磨くかということが、まちづくりに大切だと思います。
市長:私たちが当たり前と感じている冬の寒さや朝日といった自然や建物なども、外から見れば大きな魅力ということですね。
加藤:そうです。今後のためにもそこをいま一度見つめ直すべきで、つまり自分の軸足の中でやらない限りは勝てない、ということです。軸足が自分の居場所にあり、そこで考えるからこそ、クリエイティブもその場所を感じさせるものが生まれる。自分の中にある「旭川のエッセンス」を強くするほどに、旭川の魅力や特徴が発信されるのだと思います。それをせずに外の世界ばかりを意識して、世界に合わせたつもりになってはいけません。そうした迎合という行動は、後で必ずしっぺ返しが来るものですから。
▽軸足を旭川に 多くの経験を
市長:これからの旭川を担う子供たちが夢に向かって歩む中でも、とどまりたい、戻って来たいと思えるまちにしていきたいと思っています。それに大切なことは何でしょうか。
加藤:言葉で伝えても大きくなれば忘れてしまうので、大人はとにかく子供にたくさんの経験をさせてあげてほしいです。小さい頃の経験というのは、昔何か面白いことしたなあという映像として覚えているもの。私自身、初めて市の科学館ができた時にやった実験を覚えてますよ。さらに大事なのは、大人が常に「この街は素晴らしい」と口にすることです。そうすれば子供はなんとなく感覚で覚えてくれますから。そうして旭川の魅力に気づいた子たちが、軸足を旭川に置きながら活躍していってほしいですね。
■元トヨタ自動車株式会社取締役副社長 加藤光久(かとうみつひさ)さん
昭和28年旭川市生まれ。昭和46年旭川東高校卒業。昭和50年北海道大学機械工学科卒業後、現トヨタ自動車株式会社入社。エンジニアとしてカローラなど基幹車種の開発にあたる。チーフエンジニア(開発主査)として開発した「ゼロクラウン」は、革新的なコンセプトで名車のひとつに数えられる。平成24年トヨタ自動車取締役副社長就任。以後関連企業の取締役や会長職を歴任し、大樹町の北海道航空宇宙企画の顧問も務めた。令和3年藍綬褒章受章。
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