巧みな技術で私たちの暮らしを支える職人たち。経験を重ねるごとに魅力を増す、技能の世界を紹介します
■〔File No.14〕左官技能士
左官は、一説には有史以前からある伝統的な技術です。モルタルなどをコテで塗って壁や床を作るほか、基礎作りやタイル貼りまで多様な技術を持つ職人です。
▽左官技能士 高橋正幸さん
昭和52年旭川市生まれ。20歳で福田左官工業に入社。旭川左官高等職業訓練校にて後進の指導にも尽力。
■左官は生涯修行!奥の深い伝統技術
Q なぜ左官の世界へ?
元々細かい作業やもの作りが好きでした。最初は鉄筋の会社に入って鉄筋そのものの加工をしましたが、建築現場に立ちたい気持ちが強く、今の会社に入って左官技能士になりました。
Q 左官とはどんな仕事ですか?
土やモルタル、しっくいなどで壁を塗る仕事のイメージが強いかもしれませんが、実はとても多岐にわたっています。家の壁や床を塗るのは「町屋(住宅左官)」といいます。塗るといっても塗装ではなく、セメントのような材料で形を作る作業で、現代では軽量モルタルの薄塗り工法で補修することが多いです。また「野丁場(のちょうば)(工事現場)」という建物の基礎を作る、大規模な工事にも左官が入ります。その他、石こうで壁の飾りを作ったり、壁そのもののデザインや、着色材料による塗装に近い作業も行います。
Q 難しさはどのあたりですか?
広範な知識と技術が求められる点ですね。塗る材料は数百種類以上あり、コテや電動工具などの道具も多くを使い分けます。塗った材料が固まらないと次に進めないので、雨や雪は大敵で、天気を見定めながらの自然との戦いもあります。現場で総合的な判断ができるようになるまで10年はかかり、簡単な仕事とはいえませんが、もの作りが好きでじっくり取り組める方には向いていると思います。
Q 印象に残っている仕事は?
初めて「職長」として現場を統括した市内のマンションの建設です。職人たちを適材適所に配置し、危険を避け、ほかの業者さんとバッティングしないようスケジュールを組み工期を守りました。職長の役割を最初に全うしたあの現場は、今も一番の思い出です。
Q 今後力を入れたいことは?
私自身の修行と同じくらい後進の育成にも力を入れていきたいですね。今は訓練校の指導員としても活動しています。働いて実務経験を積むのが資格取得の道ですが、社員の立場で訓練校に通えば受検の近道になるんです。女性の生徒さんもいますよ。職人は減ってきてはいますが、左官は絶対になくせない職業なので、ぜひ早い時期から職人を目指してほしいですね。
■〔check!!〕左官技能士になるには?
左官技能士は国家資格。1級と2級の受検は数年の実務経験が必要なため、左官の会社に入社後に受験するのが一般的です。訓練校もあり、生徒は試験の一部が校内で修了できます。
詳細:産業振興課
【電話】65-7047
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