市内には、社会のさまざまな課題を新しいアイデアや斬新なビジネス形態で解決する企業がたくさんあります。今回の特集では、札幌発のスタートアップや施設の取り組みのほか、市が行っている支援策を紹介します。
■「スタートアップ」について専門家に聞きました
Sapporo Business VILLAGE(サッポロ ビジネス ビレッジ)
リードインキュベーションマネージャー※/STARTUPH OKKAIDO(スタートアップ ホッカイドウ)実行委員会副委員長
佐々木身智子(ささきみちこ)さん
スタートアップが社会を変えるという信念の下、国内中小企業、スタートアップの成長支援に携わる。その他、北海道大学スタートアップ創出本部にて、スタートアップ創出アドバイザーも務めている
※インキュベーションマネージャー…起業家の育成や新しいビジネスを支援する人のこと
Q.スタートアップとは?
A.一般的には、革新的なビジネス形態によって社会に変革(イノベーション)を生み出し、身近な課題を解決する企業のことです。
Q.行政機関や大学、民間企業がスタートアップを支援する理由を教えてください
A.国では、スタートアップが日本経済の成長のキーポイントになると考えています。また、札幌は多くの学生が、卒業後に道外企業へ就職している現状があるため、魅力的な企業を増やすことで、札幌に若い方が定着して、経済を活性化させることも狙いの一つです。
Q.スタートアップの特徴は?
A.研究開発のためにお金を集めて、短期間での成長を目指します。
Q.スタートアップがもっと盛り上がるために私たちができることは?
A.まずは、私たちの身近な課題を解決するスタートアップが市内にたくさんあることを知ってほしいです。そして、スタートアップの取り組みを応援してもらえたらと思います。
■「スタートアップ」は私たちの身近な課題の解決に取り組んでいます
新しい技術やイノベーションは、自分にはあまり関係がないことと思ったり、難しくて敬遠してしまったりするかもしれません。しかし、こうした新しい取り組みは、私たちの生活をより便利にしてくれる可能性を秘めています。市内で社会課題の解決に奮闘する企業の方に、お話を聞きました。
▽部活指導者と学校をアプリでつなぐ
株式会社BUKARU(ブカル)代表取締役
森田 敦(もりたあつし)さん
学校の部活動の指導を、教員から地域にいる指導者に移す「地域移行」をスムーズに進めるため、学校と指導者をつなぐアプリ「BUKARU」を開発。どの地域にいても生徒が部活動に取り組める環境づくりをサポートする
私は、パーソナルジムを運営していますが、コロナ禍をきっかけにプログラミング教室に通い始めました。今、学校での働き方改革が課題になっていますが、学校と地域の指導者をつなぐ支援ができないかと思い、アプリの構想を始めました。
現在は、道内にある複数の教育委員会と連携しながら実証実験を重ねている段階です。学校の先生の負担を軽減するだけでなく、生徒にとってもアスリートなどの指導者に専門的な視点から教えてもらえる機会になります。
また、少子化に伴って、学校によっては陸上部はあるけれど野球部はないといった、特定の部活動しかない問題も生じています。そのため、アプリを通じて複数の学校の生徒をつなぎ、合同で練習できる体制もつくっていくなど、どの地域にいても生徒がスポーツや文化活動に取り組める環境づくりをサポートして、スポーツや文化・教育を持続させる仕組みを構築していきたいです。
▽灯油配送の常識を変える
ゼロスペック株式会社 代表取締役社長
多田満朗(ただみつお)さん
家庭の灯油タンクのキャップにセンサーを付けて灯油の残量を自動計測し、給油のタイミングを見極め、効率的に配送できる仕組みを開発。灯油を配送する企業と市民の生活を技術でサポートする
私は、以前勤めていた企業で、より正しい判断は数字やデータによってできることを学びました。ある日、ホームタンクに灯油を配送している方を見て、配送の仕組みが気になり調べてみると、タンク内の灯油が減っているかどうかにかかわらず、定期的に配送している場合が多いことが分かったんです。その時に、灯油の残量をデータで管理できれば配送効率が上がるのではと考え、「スマートオイルセンサー」を開発しました。
2015年に創業し、現在、37の都道府県で、4万個以上のセンサーが灯油の配送企業を通じて設置されています。配送企業からは「1回の配送で給油量が30%以上増加した」「配送人員を1日平均3・3人から2・2人に減らせた」という報告もいただいていますね。配送時に車から出る二酸化炭素の量も減らせますし、人手不足の解消にも貢献しています。
今後は高齢者の見守りや防犯への活用といったさらなる付加価値を付けて、個人向けの販売も進めていく予定です。
詳細:イノベーション推進課
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