さまざまな原因で記憶や思考などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障を来した状態である「認知症」。
昨年10月1日時点で、本市では高齢者の約9人に1人が認知症と診断されているほか、若くして認知症になる方もいます。
今回の特集では、この病気と向き合う方たちの声を通して、認知症について紹介します。
■知ってほしい、私たちが向き合う「認知症」
ご家族に聞きました
竹内真一(たけうちしんいち)さんと、妻の瑠璃子(るりこ)さん
5年ほど前に瑠璃子さんが認知症と診断され、真一さんが自宅で支えながら暮らしています。瑠璃子さんは、認知症になっても希望を持って自分らしく暮らしていけることを自らが発信する「ほっかいどう希望大使(認知症本人大使)」として、北海道から任命されています。
▽瑠璃子さんの認知症に気付いたきっかけ
日付や曜日が分からない、電子レンジやガスこんろの使い方が分からないといった症状が出始めたことがきっかけです。妻の母も認知症で、介護した経験もあったので、「もしかして」と直感しました。すぐに地域包括支援センターへ相談し、紹介された病院でアルツハイマー型認知症と診断されました。身近な人が認知症であったためか、元々誰もがなり得る病気だという認識はあったので、「まさか」という驚きはなかったんですよね。ただ、妻が認知症だということをしっかりと受け入れるまでには3年ほどかかりました。
▽笑顔で暮らす、瑠璃子さん
昔から社交的で、人と話すことが大好きな妻。妻の現状を近所の方などに隠さずに伝えることで理解も得られ、これまで通り楽しそうにお話をしています。外で人と話すことで、パッと表情が明るくなり、妻らしい笑顔を失わずに暮らせていますね。人に声をかけられたり、人と話したりすることが良い刺激になり、症状の進行を遅らせることも期待しています。また、「困っていたら助けるよ」「○○を買ってこようか?」などと、皆さん温かく声をかけてくれるんです。「1人ではない、見守られている」という安心感もありますね。
▽介護する人の時間も大切に
妻は、着替えや歩行などの日常生活のほぼ全てに介護が必要で、私自身、つらく感じることも正直あります。介護される人だけではなく、介護する人の心の健康を保つことも大切なんですよね。そのため、全てを1人で背負わず、妻には日中の数時間をデイサービスなどで過ごしてもらい、その間に私は自分の趣味に没頭できる時間をしっかりとつくっています。毎週水曜に子どものおもちゃを修理するボランティアをしていて、そういった時間が心の余裕につながっていると実感していますよ。
▽瑠璃子さんへの感謝
働いていた頃は、家事は妻に任せきりでしたが、妻が認知症になってからは私が担うように。妻のこれまでの苦労に気付きました。今、そばで妻を支えているのは、これまで自分を支えてくれた恩返しだと思っています。介護をきっかけに、料理や家計のやりくりなど、私自身ができるようになったこともたくさんあるんですよ。
▽言葉で愛を伝えている
妻には、特に認知症になってからは毎日「愛してるよ」「大好きだよ」と伝えているんです。思っているだけでは伝わらないでしょ?(笑)暖かい日にお弁当を持って近くの公園でピクニックをしたり、街でケーキを食べたり。一緒にいられる時間が、かけがえのないものなんです。妻とはこれからも、1日でも長く一緒にいたいと思っています。
▽市民の皆さんへのメッセージ
認知症は誰もがなり得る病気なので、なる前から正しい知識を持ち、心構えをしておくことが大切です。私も、事前に認知症について調べたり、家族の介護を経験したりしたことが、今に役立っています。また、認知症と診断された場合は、隠さずに周囲に伝えることも大切ですね。私たちが向き合う認知症について、多くの皆さんに知ってほしいです。
監修:札幌医科大学医学部 神経精神医学講座 主任教授、札幌医科大学附属病院 認知症疾患医療センター長 河西千秋(かわにしちあき)氏
詳細:介護保険課
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