■専門家に聞きました
札幌医科大学医学部 神経精神医学講座 主任教授、札幌医科大学附属病院 認知症疾患医療センター長 河西千秋(かわにしちあき)氏
札幌医科大学医学部 神経精神医学講座 助教 石田智隆(いしだともたか)氏
・認知症疾患医療センターとは?
認知症の鑑別診断※と初期対応、専門的な医療相談、診断後の支援のほか、地域の医療・介護関係者や住民向けの研修なども行います。地域全体で、進行の予防から生活の維持までの医療を提供できる体制を構築するために、市が指定した医療機関です。
※可能性がある複数の病気を比較した上で、合理的に病気を特定すること
●どんな症状がある?
脳の細胞が壊れることで起こる「中核症状」と、ご本人の元々の性格や周囲の生活環境に影響されて起こる「行動・心理症状」があります。中核症状は認知症の方に共通して見られ、行動・心理症状は人によって症状の現れ方に差があります。
▽中核症状
・見当識障害…季節・時間・場所が分からなくなる
・記憶障害…体験したことを覚えられなくなる
・失認・失語・失行…人や物が分からない、言葉を忘れる、動作できない
・実行機能障害…仕事や家事ができなくなる
▽行動・心理症状
・暴言・暴力
・幻覚
・妄想
他には…不眠、一人歩き、拒否、不安・焦り、不穏、食べ物ではない物を口に入れる
●どんな種類がある?
認知症の約3分の2を占めるのがアルツハイマー型認知症。物忘れから始まり、比較的ゆっくり進行していくことが特徴です。その他、実際にはないものが見える、手足が震える、睡眠中に叫ぶなどのさまざまな症状が現れるレビー小体型(しょうたいがた)認知症、脳梗塞や脳出血などにより発症する脳血管性認知症などがあり、これら3つは三大認知症ともいわれます。
●加齢による物忘れとの違いは?
▽加齢によるもの
・物忘れの自覚がある
・ヒントがあれば思い出せる
・体験の一部を忘れる
・日常生活に支障はない
・新しいことを覚えられる
↓↑
▽認知症によるもの
・物忘れの自覚がない
・ヒントがあっても思い出せない
・体験の全てを忘れる
・日常生活に支障がある
・新しいことを覚えられない
●予防するには?
バランスの取れた食生活を心がけることや、禁煙したり適度な運動をしたりすることは、認知症のリスクを下げ、予防につながるとされています。また、初対面の人との交流や、趣味のコミュニティーへの参加も脳を活性化させるため有効です。
まずは、「週3回以上、1回30分程度」を目標に散歩を始めてみませんか?
●受診のタイミングは?
ご本人や、周りの方が「おや?」と思った時は早めにかかりつけ医を受診してください。一部の認知症は手術や薬で治ることがあるほか、認知症になる手前の軽度認知障害の状態で、生活習慣を改めたり治療を始めたりすることで、改善が見込めたり、症状の悪化を遅らせたりできます。また、症状が軽いうちであれば、今後の治療やサービスの選択などについてのご本人の意思を、身近な人に伝えられます。
▽以下の症状が続く場合は、認知症の初期段階かも
・「同じことを何度も言う」と周りから言われることが多い
・探し物をしていることが多い
・いつも財布や通帳など大切な物がなくなる
・約束を忘れたり、待ち合わせの場所に行き着けなかったりする
・片付けや料理、運転などが以前のようにうまくできなくなった
・テレビのドラマは筋を追うのが面倒くさい
・身だしなみを整えることがおっくうになり、構わなくなった
・趣味や好きなことに関心がなくなった
・何をするのもおっくうになった
参考:認知症介護研究・研修東京センターひもときカレンダー(認知症ケア高度化推進事業)
●専門家からのメッセージ
▽河西千秋(かわにしちあき)氏
認知症は誰もがなり得る病気です。自分事として考え、自分が受けたい介護や「こうあってほしい」と思える社会を実現しましょう。また、認知症の介護は長く続くことも多いので、介護に向き合う方は、自分だけで対応せず、介護保険サービスなどを活用しましょう。
▽石田智隆(いしだともたか)氏
早期に診断されることは、単に早く絶望感を与えられるということではありません。ほとんどの場合、発症後の進行はゆっくり。早期に診断を受けて備えれば、その人らしい人生を送れます。今後も診察を通して、「その人らしさ」を支援していきたいです。
監修:札幌医科大学医学部 神経精神医学講座 主任教授、札幌医科大学附属病院 認知症疾患医療センター長 河西千秋(かわにしちあき)氏
詳細:介護保険課
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