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子育てコラム

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北海道東神楽町

◆幼児期の「怒らない」子育て
◇「怒り」という感情の意味
親子の関係は心の距離が近いので、容易に感情が繋がり合っていきます。特に幼児は親の言葉よりも表情や態度(ノンバーバルサイン)から親の感情をよりキャッチします。心の力(自我)が未成熟な幼児は親の感情の動きに敏感で、特に「怒り」感情にはひどく傷つくことになります。
親の視点で見ると、「子どもにはこうあって欲しい」という期待に背くような子どもの行動を「問題行動」と捉えた時に「怒り」が生じやすくなります。そして、その行動を修正しようと働きかけます(しかる・おこる)。つまりは、親が怒りをもって子どもに接しているときは子どもの「問題行動」への「怒りの感情」に巻き込まれている状態ということができます。
子ども視点で見ると子どもの全ての行動は「サイン」として表現していることになります。そのサインには子どもの心理(考えや想い)が隠されています。言葉で自身の心理を伝える力が未成熟な幼児は行動を通してそれを表現しているのです。
そのことに気付くことができれば、必然的に「怒らない」子育てができるようになります。「問題行動」ではなく「サイン」として子どもの行動を捉えようと意識するだけで、「怒り」ではなく「理解」に近づいていきます。「問題行動の修正」ではなく「より良い子どもの育ち」を考えたり、発見したりすることができるようになります。

◇子どもの育ちを支える関係
お茶の水女子大学の名誉教授でいらした松村康平先生が創始された「関係学」理論には「子どもの育ちを支える関係」のヒントがあります。特に、幼児期は子ども自立心や自己肯定感、大人との基本的な信頼関係を育みたい時期といえます。関係学理論からみると、そのために必要なかかわりは「寄り添う」かかわりと「共に活動する」かかわり、ということができます。
「~したいんだね」「~が嬉しかったんだね」「~が嫌だったんだね」言葉にできないでいる子どもの想いを言葉にしながらかかわる。「~できるかな」「~を一緒にしようか」「~してくれると嬉しいな」生活や遊びを通して子どもと共にかかわり、やる気や意欲が高まるようにする。そのような親や保育者とのかかわりあいが「子どもの育ち」を支える関係といえるでしょう。子どもを「しかる」「怒る」かかわりは幼児期の子どもの育ちを支える関係とはなりません。
とはいえ、心の距離が近い親子関係ではどうしても感情が強く共鳴し合うので、時には負の感情に巻き込まれることも良くあります。親にも子育てを離れて自由な時間を持つことや誰かを頼って相談することも必要なことです。一人で抱え込まずに完璧を自身にも子どもにも求めずに、肩の力を抜いて子育てを楽しんでほしいと願います。

◆杉本太平(すぎもとたいへい) プロフィール
宇都宮共和大学子ども生活学部教授。資格は認定心理士、人間関係士。
東京都文京区教育センターの心理相談員や埼玉県下で乳幼児健診・乳幼児発達支援・子育て支援などに従事し、現在大学において保育者養成に務めている。その他、人間関係・HRST研究会会長として関係学理論を背景に独自に開発した地域住民や対人支援の専門職者を対象に心理劇を用いたアクティブラーニング(HRST)の研修会を主催し、子育て支援者の養成を中心に各種の講演活動、子育て・人間関係に関する出版物の発行を行っている。

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