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ひがしかぐらの健康食育

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北海道東神楽町

■mRNAワクチンだけにとどまらないmRNA医薬の可能性 ~がんの治療薬にも~
◇メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン・mRNA医薬とは
2023年のノーベル生理学・医学賞は、メッセンジャーRNA(mRNA)技術の研究で新型コロナウイルス感染症ワクチンへの道を開いたカタリン・カリコ博士らに贈られました。mRNAは体内でDNAから遺伝情報を写し取って、たんぱく質の合成のために働きます。人工的に合成したmRNAを体内に投与してたんぱく質を作らせ、ワクチンや治療薬として用いるのがmRNAワクチン・mRNA医薬です(図1)。
※図1は本紙をご覧ください。

◇mRNAワクチンの実用化
体内に侵入した外来のmRNAは異物と見なされて、目的のたんぱく質を作る前に分解されてしまいます。そのためmRNAはワクチンとしては使いにくいとされていました。カリコ博士らはmRNAを構成する物質の一つを置き換えることで異物と認識されるのを回避し、炎症反応が抑えられることを発見し、これが新型コロナワクチン実用化の突破口となりました。さらにmRNAを安定に保持して送り届けるためのリポ脂質ナノ粒子の研究開発の進歩もあって新型コロナワクチンは実用化されたのです。

◇mRNAワクチンの特徴
mRNAが期待されるポイントの1つが、短期間で比較的簡単に設計することができることです。新型コロナワクチンの開発ではこのメリットが生き、ウイルスのゲノム配列が公開されてからわずか1か月半で治験用のワクチンが出荷。1年以内という前例のないスピードで実用化にこぎつけました。また、ウイルスの変異にも迅速に対応することができました。

◇mRNAのがんワクチンへの応用
がんワクチンはがん細胞独自の遺伝子変異に伴って新しく生まれた変異抗原(ネオ抗原)をmRNAでコードしてワクチンとして投与するもので、身体の本来の免疫の力を活性化してがんを治療しようというがん免疫療法の一種です。それぞれの患者のがんによってネオ抗原は異なることが知られており、ワクチンを一人一人カスタムメイドする個別化医療となります。mRNAでなければできない画期的ながん治療として期待されます。

◇疾患治療用mRNA医薬
虚血性心疾患に対する血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)mRNA、嚢胞性線維症に対する嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)mRNA、脊髄損傷や虚血性脳疾患に対する脳由来神経栄養因子(BDNF)mRNA、変形性関節症に対する軟骨の分化・増殖転写因子(RUNX1)mRNAなどが開発中です。mRNAはどのようなタンパク質でもコードすることができます(抗体のような分泌タンパク質から細胞表面で働くイオンチャンネル、核内で働く転写因子まで)。その特徴を生かして、生まれつき不足している酵素を補充したり、成長因子を投与することで組織を再生させるなど、mRNAでなければできない全く新しい治療の実現が期待されます。

教えてくれたのは…
東神楽町国保診療所 所長 相馬光宏先生

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