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子育てコラム

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北海道東神楽町

■学童期の「やる気を伸ばす」かかわり
◇教育相談で出会う子どもの心のゆがみ
教育相談の場で出会う学童期の子どもの多くは、いわゆるグレーゾーンといわれる「学習上の困難」やいじめなどの「子ども集団における困難」、不登校や社会的引きこもりなどの「家庭や教育の場における困難」から、自己肯定感や自己効力感といった自分で自分の存在や適性を認めてあげられない心のゆがみを抱えている状態にいました。何故、こんなにも今の子どもたちは生きづらく素直に自分を表現したり、認めたりできないのか、ということを考え続けています。
学業不振にいたる子どもの多くは、周りの大人から、注意して人の話を聞いてない、怠けている、家庭教育に問題があるなど、さまざまに誤った評価を受け、学習意欲が減退したり、逸脱行動を起こしたり、無気力や問題を回避する傾向を生じたりといった、いわゆる「二次的な障害」へと発展することが心配されます。また、正しい問題理解がされずに、誤った評価を受けることで親も多大なストレスや不安を感じて、子どもを受容できずに厳しくしすぎてしまうなどの混乱が生じてしまうこともあります。つまりは「評価」ではなく、より良く子どもを「理解」できる大人が存在しなくなっていると思います。

◇「やる気」を伸ばすということの意味
「やる気」は「内発的動機づけ」ともいわれます。人から言われて行動する、大人の評価を気にして頑張る、などは「外発的動機づけ」になります。まず、重要なのは子ども自身が興味・関心のあることを見つけて、夢中になって、楽しみながら取り組める環境を整えることが「やる気」を伸ばすかかわりといえます。最近、メディアで「子ども博士」がクローズアップされていますが、これも「やる気」の伸ばし方の可能性といえます。
学童期は自分自身の能力の発達(好きなこと・自信が持てることがあるか)や、社会的なコミットメント(学校や地域社会に居場所があるか)、対人関係力を伸ばしつつ「独立した存在」(自分らしさを肯定する気持ちが育っているか)として育ってきているか、特に、自分自身が自ら学んだり取り組めたりしたことを「他者から承認」され、誰かの役に立つ(帰属する集団に貢献できている)ことが求められます。ここでも、大人が教え込むことは必要とされていません。子ども自身が自分の力で試行錯誤しながら何かを成し遂げていくように支援することが必要とされています。
プレイセラピー(遊戯療法)の概念を用いると、子どもにとって必要なのは「自己が受け入れられる世界」(自己肯定感)、「自己がかかわると変化する世界」(自己効力感)を体験し、そのことを通して、現実世界の中にある「自分がかかわっても変わりにくい世界」(困難感)を受け入れて成長していくことができる場といえます。それを共有できる仲間や成長を支え見守れる大人との出逢いが「やる気」を伸ばしていく力になると考えます。

◆杉本太平(すぎもとたいへい)プロフィール
宇都宮共和大学子ども生活学部教授。資格は認定心理士、人間関係士。
東京都文京区教育センターの心理相談員や埼玉県下で乳幼児健診・乳幼児発達支援・子育て支援などに従事し、現在大学において保育者養成に務めている。その他、人間関係・HRST研究会会長として関係学理論を背景に独自に開発した地域住民や対人支援の専門職者を対象に心理劇を用いたアクティブラーニング(HRST)の研修会を主催し、子育て支援者の養成を中心に各種の講演活動、子育て・人間関係に関する出版物の発行を行っている。

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