■ニシンを弔う供養塔
森町は、古くから良好な漁場であり、江戸時代には「茅部場所」とも呼ばれ、ニシン・タラ・サケ・マス・イワシなどが豊富な漁業交易地となっていました。特にニシンの需要が高く、本州からニシンを求めて出稼ぎに来る方もいたようです。1750年代には大漁により大いに賑わいを見せたようです。しかし漁獲量が多すぎたため、加工処理がしきれないニシンを当時の技術では長期間保管しておくことができず、土の中に埋めて処分していました。食べることもなく捨てるしかなかったニシンを弔うために建てられた石碑が、本茅部に建てられている「茅部の鯡供養塔」です。
この供養塔が建立されたのは今から約260年前、1757年(宝暦7年)のことです。碑文には供養のための念仏と建立に携わった方々の名前が刻まれています。その中には茅部(森町)だけではなく亀田や箱館から来た人たちの名前もあることから、噴火湾一帯でニシンが豊漁であったことや、多くの人がニシンの廃棄に心を痛めていたことが分かります。
ニシンのみを祀る供養塔は北海道でも珍しいことから「茅部の鯡供養塔」は北海道の漁業の歴史を伝える貴重な石碑として、1963年(昭和38年)に北海道有形文化財に指定され、今も大切に保管されています。
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