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ふるさとの記憶〔第6号〕

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北海道江差町

東京江差会 松岡 義明さん
(千葉県千葉市 78歳・江差町字津花町 出身)

■津花の浜での思い出
昭和30年(10歳)頃の風景です。イカ漁が始まって、朝、大漁旗(ばた)を掲げた船が次々と戻ってくると浜は大賑わいになります。
船の周りで近所の母さん方が、良く手入れされたマキリでイカをすっと裂き、内臓を取る。漁師は海でザブザブ洗い、子ども達はそれを縄に掛けて干していきます。これが終わってようやく朝ご飯。おかずは勿論(もちろん)イカの刺身。昼は煮物。夜は焼いたもの。これが続くのです。何せ漁師はイカ漁にしか行かないのだから。他の魚は無い。

■お祭り目標にお小遣い稼ぎ
朝食が終わるとイカ伸(の)しが待っています。これは子ども達にとって貴重な小遣い稼ぎの場だったのです。番屋へ集まり、一日干したイカの天辺(てっぺん)を噛(かじ)り、耳を引っ張り、喉元に踵(かかと)を当てて身を広げるようにグイっと引っ張り、更に真ん中を引っ張るとパきっと骨が切れる。そして10本の足をパラパラと整えて一枚上り。これを太陽に温められた砂の上に並べていくのです。好天に恵まれると飴色(あめいろ)のカンカンと音のする特級のスルメが出来上がるのです。一日に百枚から二百枚ぐらい伸したかな。一枚五銭ぐらい。これを帳面(ちょうめん)につけてもらい、お祭りの時にまとめて払ってもらうのです。百円には届かなかった。アイスキャンディが五円の頃でしたから結構な額だったと記憶しています。
あれから70年、随分変わりました。今、津花に砂浜はほとんどありません。だけどこの昔の風景と日常は心の中にきっちりと残っているのです。ずっと残していきます。

★次回(第7号)の掲載は8月号。どなたのどんなお話がきけるかお楽しみに!

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