東京江差会 松本 隆子(旧姓:井口)さん
(福島県福島市 77歳・江差町字中歌町出身)
■一番の思い出は江差の夏
江差を離れてもう半世紀以上になります。真っ先に頭に浮かぶのは江差の夏の思い出でした。
例年8月9日から11日にかけて行われる姥神大神宮渡御祭は380年の伝統が続くお祭りで、3日間かけて豪華な山車(やま)が町中を練り歩きます。
私の家は中歌町一昔のメインストリートの中心で、大正の頃より宿屋を営んでおりました。商家は宵宮の支度から忙しく、打ち水や提灯、垂れ幕などをめぐらし山車の来るのを待ちました。
おみこしに続いて山車が表れると子供心に「大きいな!立派だなあ!」と見とれていた事を思い出します。
お祭りの当日は姥神神社の付近には露店が立ち並び、私たち子供は珍しものを探し求めてお店を回った記憶も遠い日の夢となりました。
■中村家から浜へタイムスリップ
宿屋の向かいには親戚の中村家があり、大きな玄関口から入ると奥まで土間で裏口を出ると海まで続きます。
この思い出を書くにあたって中村家のことに興味を抱き、調べてみました。江戸時代からの江差の発展は、日本海沿岸の漁家相手に海産物の仲買をしていた近江商人が旧中村家を建てた後に中村家が譲り受けたということでした。北の港町でありながら「江差の品揃えは、江戸、大阪と変わらない豊かさがあった。」と言われた繁盛の時代もあったようです。
さて中村家の裏口からタイムスリップすると、そこはもう江差の浜でした。毎日学校から帰ると急いで浜に行き、仲良しを見つけては潜ったり、泳いだり…。楽しい夏の思い出でした。
★次回(第12号)の掲載は12月号予定。どなたのどんなお話がきけるかお楽しみに!
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