司法試験に合格するためには、問いに対して、論理的に考え、その思考過程を文章で表現することが求められます。そのため、司法試験に合格した人は、語彙力や表現力に長けていると見られます。しかし、まだまだだと感じさせられる場面があります。それは「裁判員裁判」です。
裁判員裁判とは、職業裁判官と裁判員に選任された国民が1つの裁判体を構成して、公開の法廷で、事件を審理し、判決を宣告する形式の刑事裁判です。弁護人には、主に、冒頭陳述や弁論という手続で、裁判員の方々に向けて、お話する機会があります。冒頭陳述では、弁護人は、法廷の中央にある証言台の前に立って、裁判員の方々の方を向いて、被告人(刑事裁判にかけられた人)に有利なストーリーを提示し、このストーリーを支える証拠を出すので、証拠調べ手続で着目してほしいポイント及び証拠調べの際のモノの見方や考え方などをお話します。実は、こうしたお話をする前に、検察官が同じようなこと示しているので、検察官のストーリーとの違いが分かるように、かつ、ストーリーに合理性を持たせるように、誰もが知っていると思われる単語を用いて、説明しなければなりません。また、証拠調べ手続で着目してほしいポイントや物の見方考え方の説明では、主に、検察官とのストーリーとの違いが生まれる理由となるポイントを指摘して、その理由の合理性の判断方法を説明しなければなりません。特に、理由の合理性は、裁判員の方々と共有できる経験則を踏まえて、具体的に、簡潔に、かつ、分かりやすく説明しなければなりません。しかし、裁判員の方々に「なぜ?」「ん?」と思われ「分かりづらい。」という評価を得てしまうことがあります。これは、弁護士がプレゼンテーションの仕方を学んでいないためです。私もようやく最近になって裁判員の方々がうなづいてくれるようになりましたが、まだまだ向上させたい分野です。
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法テラス江差 弁護士 川口 智博
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