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町長日誌

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北海道池田町

◆6月5日(月) 安井 美裕
鈴木宣弘(すずき のぶひろ)氏(東京大学大学院教授)は、日本の食料問題に真正面から向き合い、その鋭い論評が新聞などでよく紹介されています。元農水官僚でありながら「過激」とも感じる日本の農政への批判も強く、TPP(環太平洋経済連携協定)の反対論者、遺伝子組み換え食品・作物否定者でもあるようです。
先日読んだ著書「世界で最初に飢えるのは日本」では、食料37%という自給率に、種と肥料の海外依存を考慮したら日本の自給率は今でも10%に届かないくらい。お金を出せば輸入できることを前提とした食料安全保障は通用しない、などと強く危機感を抱くものでした。米国の研究者は、世界のどこかで核戦争が勃発し、「核の冬」による食料生産の減少と物流停止が発生した場合、世界全体の飢餓者の約3割が日本人(7200万人、人口の6割)であると推計していることから、この著書のタイトルになっているようです。確かに、コロナ禍やウクライナ紛争により、日本の食料自給の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになる今日(こんにち)、鈴木氏の主張は、現状に対する警笛だと感じています。
5月31日に開催された北海道町村会定期総会の記念講演では、全道から集まった町村長を前に「食をめぐる安全保障の危機と打開の処方箋」と題し、鈴木氏が講師を務められました。この上なく関心を持って参加しましたが、打開策として、農家への減産要請ではなく損出補填(ほてん)、政府買い上げによる人道支援、子どもたちを守る学校給食の公共調達などを総合パッケージで実現すべきとし、最後は、生産者、消費者、関連産業など国民と政府の役割を明記した「食料安全保障推進法」を制定し、発動基準を明確化した予算措置を求めています。
ズバズバとした物言いには、過激さよりも説得力を感じました。最後に「少しのコスト高を国・国民が支え合う。そんな社会を築くため、生産地から声を上げてほしい。一緒に頑張りましょう」と。国内の食料・農業を守ることこそが安全保障だと感じる講演でした。

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