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自治体の皆さまへ

男女共同参画コラム

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北海道浦幌町

■連載149
仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝

晩夏から初秋へと季節が移り変わっていきます。暑かった夏を満喫されたでしょうか。
人手不足は深刻な問題です。日本最北端の私立高校である稚内大谷高等学校でも、超売り手市場です。その一方、入社・入職した新人が簡単に離職する昨今です。若手社員が離職する主たる理由としては、職場の人間関係そして仕事のやりがいの無さが挙げられます。
前者は上司や先輩・同僚と意思疎通が図れなかったり、コミュニケーション不足であったりと、要するにチームの一員になっていないということでしょう。後者は、仕事を通して達成感や充実感が得られないことであり、言い換えれば職務満足が得られていないことです。流出すれば、多大な労力をかけた採用努力も水泡に帰すだけ。リテンション戦略(維持・退職防止)に創意工夫をしていかないと、事態は改善しないのではないでしょうか。
一般的には、リテンションは金銭的報酬と非金銭的報酬に分けられます。金銭的報酬は言葉どおりですが、果たして成果主義や高報酬だけ対応できるのでしょうか。もちろん給与水準の引き上げは一定の効果があると思います。ですが、あくまでも私見ながら、非金銭的報酬が非常に重要だと確信しています。ここは経営職・管理職の責任は重かつ大。
まずは、その人の存在を認めることです。具体的には、教員が生徒・学生を気にかけると同様に、経営職・管理職は部下を気にかけることです。人間は感情の動物であり、弱い生き物です。それゆえ、関心の対象にならない、すなわち無視されることが一番辛い。その原点は挨拶か。上司から部下に積極的に挨拶するだけでも、部下の受け止め方は変るのではないでしょうか。「挨拶は目下からするものだ」という発想や意識を捨て去るべきではありませんか。挨拶をしても何の反応も示さない傲岸不遜な態度は論外。それは人間失格。
あくまでも私のささやかな人生経験からは、人は他人の短所や欠点をあげつらう減点主義志向が強いように思います。最も卑近な例としては、「今年の新人はまともに挨拶も出来ない」がありますね。そこから派生して、問題箇所を見つけては批判・叱責していく。至らない点があれば、理由や根拠を示して改善に向けた助言や指導・支援が求められます。また、誤りを犯したときには、その行為自体を厳重に注意し、原因があるから結果があることを踏まえて、本人には二度と誤りを犯さないように改善方法を提示しつつ諭す。
また、仕事を通して成長を実感し、職務満足を得てもらうためには、部下に対して「仕事の下請け」のような指示・命令を出すのではなく、その仕事を任せる意味や目的を丁寧に説明することです。部下に仕事への責任感や使命感を持ってもらう上では、「納得性」が肝要かと。そして、上司はその仕事の過程に注意を払いながら、必要に応じて優しさに裏打ちされた助言や指導をおこなう。その極意は「何かを褒めてから指摘をする」。
組織では、職位・職階が上がっていくにつれて、求められるマネジメント能力が変ってくるのではないでしょうか。いわゆる「スキル系」から「人格系」(人徳・人望)が必要になると、私は考えます。職場を大切にする、働く人を大切にするためには、抽象的ですが、経営職・管理職は人間性を豊かにしていくことが必須。人格の陶冶は永遠の挑戦課題では。

▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。

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