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男女共同参画コラム

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北海道浦幌町

■連載153
仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝

年始年末は例年のことながら、気ぜわしいものです。とりわけ健康管理に注意したいですね。昨今、人手不足は深刻な問題となっています。稚内市では、高校卒業生に対する有効求人倍率が約8倍です。稚内大谷高校も例外ではありません。高校に求人をいただきながら応募のなかった地元企業には、私が直接訪問して謝罪するとともに、従来と異なる企業説明会の在り方を提案させていただくようにしています。もちろん進学率の上昇に対応して、進学支援体制の充実・強化の必要があります。けれども、地元企業に目を向けさせる就職支援も、地域密着型小規模私立高校としての大切な役割と認識しています。
せっかく努力を積み重ねて採用した新卒採用者であっても、すぐに離職されれば苦労も水泡に帰してしまいます。離職を防ぐ対応、言い換えれば如何に定着率を高めていくかが、企業に問われていると思います。いわゆるリテンション戦略の構築と実行が極めて重要でしょう。
仕事に関するストレスの要因は、年齢階層で異なります。20歳未満では(複数回答)、「仕事の失敗・責任の発生等」46・6パーセント、「仕事の量」42・7パーセントが圧倒的に1位、2位を占めています(厚生労働省「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」(2023年8月))。育てる経営の視点に立つならば、新人さんには、予定していた仕事量よりも控えめな仕事量を割り当てることが、まずは前提条件でしょう。当人は意外に容量が少ないかもしれません。そして、過ちを犯すことは人間の宿命ゆえ、悪意のある妨害や意図的な誤りでない限り、仕事において挑戦した結果の失敗は、上司や先輩が共に改善や是正にかかわることが必要ではないでしょうか。
失敗を恐れ過ぎて主体性を発揮することが出来ないことは、現代の若者の気質でもあります。そのうえ、叱責された経験が少ない、すなわち「怒られ慣れしていない」ので、注意の仕方も要検討。単に失敗それ自体を問題にして、新人さんを強く叱責することは、よほどのことがない限りご法度かと。「原因があるから結果がある」との原則に基づいて、原因を過去にさかのぼって究明し、二度と同じ過ちを繰り返さないように今後に向けた対応を組み立てる。要するに時間軸で考えるならば、「現在」の問題状況→「過去」における原因究明→「未来」に向けた改善策、という過程を着実に進めていくことです。
仕事の手応えを体感させる機会や場面を作ることも、上司や先輩の役目だと思います。「仕事能力向上を実感した契機」(複数回答)では、「仕事に関して学んだことを実際に活用できた」が首位で16・6パーセントでした。その一方で、「仕事能力の向上を実感したことが無い」は46・6パーセントでした(公益財団法人日本生産性本部「第12回働く人の意識に関する調査調査結果レポート」(2023年1月))。新人さんに自信をつけてもらうためには、俗に言う「仕事で一皮むける」体験をさせてあげないといけませんね。
新人さんは、組織から期待されている現状業務の遂行(期待役割)に全力で取り組むことです。その過程を通して、実績と信用を少しずつ積み重ねつつ、ようやく期待役割を超えて、自分が取り組むべき役割(創造役割)を担うことが出来るでしょう。その原動力は、素直さと謙虚さに裏付けられた努力。キャリアとは、まさに日常向き合う仕事に対する取り組み方では。

▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。

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