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男女共同参画コラム

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北海道浦幌町

■連載160
仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝

北海道の夏は短いとは言え、豊かな緑と抜けるような青空を楽しみたいと思います。
過日、とあるビジネス雑誌の編集担当者から電話インタビューを受けました。「今年4月に社会人となった新人さんに対して、数ヶ月を経て彼ら彼女らに言葉を送るならば、あなたはどのような言葉を送りますか」という旨のインタビューでした。私は「謙虚さ・誠実さ・律義さ」という三点セットであると話しました。
ようやく疾風怒濤の3ヶ月が過ぎ、少しずつ仕事に慣れ始めた頃に、そろそろ仕事に人柄が滲み始めると、私は思っています。あくまでも私見ながら、仕事に向き合う姿勢や態度に、その人の人生観や価値観が投影されるのではないでしょうか。それは、学生の学びに向かう姿勢や態度から、その学生の性格や資質が見て取れることによく似ています。
新人さんはビジネスマナーを身につけつつ、ビジネススキルを高めていくという長距離耐久走にわずか一歩足を踏み出したぐらいでしょう。それゆえ、不安があったり、失敗があったりするのは当然です。ですが、失敗したならば、謙虚に自らを省みて、上司や先輩の指導や助言を素直に受け入れて修正していくことが必要です。嘘や偽りとは無縁であって、仕事に誠実に取り組み、人には誠実に接していく。そして、人間関係においては律義者であって欲しいですね。義理堅さプラス丁寧さと言い換えても良いであろう律義さは、未だに湿り気の多い日本社会を生きていく上での道中手形であると、私は確信しています。
地元企業あるいは地元団体は、たとえ経営環境がグローバル化していたとしても、その組織実態は良くも悪くも、旧来の日本型組織の特徴を色濃く残している、と言っても過言ではありません。サンチャゴの巡礼のように、キャリアの道程を自分の歩幅で着実に歩み続けるためには、陰徳を積みながら、道を自ら切り開いて整備しながら一歩ずつ前に進むことが肝要かと。「誰それに何々してやった」「俺は常に何々している」などと、自ら吹聴する輩は、思惑と打算あるいは不健全な意図が心の中で蠢いていることでしょう。
陰日向なく律義な振る舞いを自然な形で続けていけば、陰徳は積みあがっていきます。愚直という言葉と共に律義は、日本人がこよなく愛するキーワード。上司は仕事のスキルやノウハウを教えるだけでなく、人生の先輩として全人的教育の視点から、律義さの意味と重要性を慈雨のごとく新人さんの心に沁み込ませて欲しいものです。そのような人間性豊かな上司に巡り会うか否かは、神のみぞ知る。巡り会わせという不思議な縁が有りや。
また、人材育成の常識とも言える「褒めて育てる」上司が優秀な上司との見方が少なからずあります。けれども、私はこの常識には疑問を持っています。上司が褒めるとは言うまでもなく、「上から評価して褒める」ことです。私の独断と偏見に基づくならば、上司が部下を褒めるという行為は部下の自立性を奪って、上司に都合がいい制御可能な部下に仕立てようとする行為と考えます。最近「寄り添う」という言葉が流布しています。この言葉を人材育成に当てはめるならば、「目線を合わせて横から勇気づける」ことと言えるのではないでしょうか。ともあれ、上司と部下の関係性は、永遠の課題ですね。

▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。

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