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男女共同参画コラム

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北海道浦幌町

■連載161
仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝

晩夏から初秋へと季節も移り変わろうとしています。惜しみゆく夏ですね。
仕事においても経験による学びが極めて重要です。いわゆる「経験学習サイクル」です。
まず何事にも取り組むことから始まる(「経験」)。仕事を選り好みすることなく、与えられた仕事に誠実に取り組む。そして、仕事に取り組んでいたときの自分自身の言動や態度あるいは思いや気持ちを振り返る(「内省」)。順調に取り組めたこと、また逆に失敗したことを通して、自分なりに仕事の教訓を得る(「概念化」)。自ら得たその教訓を実際に試してみる(「実践」)。もし、試してみて上手くいかなければ、その経験から内省して修正を加えて、新たな教訓としてこれを実践する。このサイクルが持続的に続いていけばしめたものです。
とりわけ新人さんが経験学習サイクルを軌道に乗せて、仕事に対して自信を持つまでには、一定の期間が必要でしょう。もちろん個人差はあります。けれども、新人さんが成長するまでは焦ってはいけません。その成長過程において、仕事の悩みや不安に耳を傾けて、助言や励ましの言葉を伝えることは、上司や先輩にとって大切な役目であります。
では、新人さんが上司や先輩に対して、仕事上に関わる本音を話すことが出来るか否か。それは当然のことながら、話しかけやすい雰囲気づくりを前提として、上司や先輩の人間性に裏打ちされたコミュニケーション能力次第かと、私は考えます。さらに踏み込むならば、コミュニケーションスキルの巧拙と言っても過言ではありません。
「本音で話せる人の特徴」としては、「最後まで話を聞いてくれる」「話したことにうなずいてくれる」「親身になって話を聞いてくれる」「公平に人の話を聞いてくれる」「相槌をよく打ってくれる」が上位を占めました。他方、「本音で話しにくい人の特徴」としては、「そもそも自分の話に興味がなさそうだ」「意図しない相手に話が伝わってしまいそうだ」「自分の正しいと思うことを曲げなさそうだ」「自分の話を理解してくれないと感じる」「自分の話に対して、関心が特になさそうだ」「自分の話しに関心を示さなさそうだ」「型にはまった応答しかしてくれなさそうだ」などが挙げられています(パーソナル総合研究所「職場での対話に関する定量調査」(2024年3月))。
また、上司・先輩の表情や態度も、スキルと言えばスキルかも知れません。温和でにこやかな表情や笑みを浮かべて、落ち着いた物腰で丁寧に聞きそして話す。「意志あれば、道あり」という諺もあるように、これは意識すれば容易にできるのではありませんか。さすれば、新人さんも自己開示してくれると考えるのは、いささか楽観的過ぎますかねえ。
ともあれ、上司・先輩と部下の関係性構築に際しては、如何に両者の間で信頼関係を築くかが最も大切なことであります。そのためには、対話の量と質が問われるでしょうね。両者ともそれぞれ仕事を抱えているゆえに、忙しいに違いありません。しかしながら、普段から業務改革を効果的に推進しているならば、時間を生み出すことが出来ます。「育てる経営」を志向するならば、貴重な時間を無駄にすることなく、部下との対話に振り向ける時間を確保することこそ、上司・先輩の腕の見せ所の一つではないでしょうか。

▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。

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