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自治体の皆さまへ

男女共同参画コラム

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北海道浦幌町

■連載165
▽仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝

いよいよ今年もあとわずかとなりました。この1年を振り返るならば、お一人お一人それぞれに思いを馳せることがあるでしょうね。社会全体から寛容性が失われ、何かにつけて余裕が無くなったことを実感するのは、私だけでしょうか。ともあれ、浦幌町の皆様におかれましては、良いお年をお迎えされますことを祈念致します。
さて私事ではなはだ恐縮ですが、このたび、前著『リーダーが優秀ならば、組織も悪くない』の出版でお世話になった(株)PHP研究所から、『組織と仲間をこわす人、乱す人、活かす人‐仕事は必ず誰かが見ている‐』をPHP新書として上梓致しました。同書は、『北海道新聞』夕刊の「水曜コラムひらさんの異論・暴論・青論」に掲載された仕事論やキャリア論をテーマにした拙文から、厳選して加筆・修正した59編から構成されています。
出版の動機は、コラム愛読者の方々の強いご希望があったからです。加えて、いくら最新の経営理論を導入しても、いかなる制度改革を断行しても、改善される気配がなく、むしろ組織の停滞や衰退を招いている事例を、私自身が多く見てきたからです。働く仲間が疲弊していくという悪夢の状態すら少なからず。あくまでも私見ながら、ともに働く仲間の実情を十分に把握したうえで変革を進めなければ、組織の改革は成功しない。では、「組織改革に成功するためには、何が必要か」という問いに、「日本人がこれまで大切にしてきたものの中に、存在しているはずです」と、私は新著を通して答えたつもりです。
私の考えた答えとなるものを、紙幅の関係で1つだけ挙げるならば、今では古語いや死語すらなっている「人望」ではないでしょうか。このVUCAの時代と呼ばれる昨今、「人望」が復活するように思えてなりません。ちなみにVUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字です。
ここで余談を。教育分野におけるデジタル教科書の活用が叫ばれている日本ですが、デジタル先進国の北欧諸国では、紙の教科書が復活し始めています。紙の教科書と手を動かして書くノートが、基礎学力養成の基盤でしょうね。日本語力向上には、やはり活字を読むことと紙の辞書を活用することです。学び方の本質は、時代の潮流に淘汰されません。
組織は人間から構成されます。イギリスの文豪シェイクスピアが喝破したとおり、人間は感情の動物です。組織の中でIT化が席巻し、AI(人工知能)が普及しても、人間は相互に関係性を持ちながら働きます。リーダーシップはフォロワーシップがあってこそ、発揮されるものです。人間は感情の動物ならば、人は心で動くと、私は思うのですが。時代錯誤、復古主義との批判を覚悟のうえで言うならば、人の心を動かし、協働していくには、人望あるリーダーの出番ではないでしょうか。
新著のサブタイトルを「仕事は必ず誰かが見ている」は、私の実体験に基づいた「仕事の真理」です。陰日向なく、与えられた職責を誠実に果たすことは尊い営みです。それは誰かが必ず見ています。人知れず評判となり、その人の価値が自然と高まっていくことは確実です。ただし、手抜きや粗雑さは、「天網恢恢、疎にして漏らさず」ですから、要注意。

▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。

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