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特集 南極の自然と観測隊の活動!

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北海道紋別市

特集 南極の自然と観測隊の活動!
産業部水産課水産研究・国際シンポジウム学術担当 岩本勉之副参事

2021年11月10日に日本を出発した第63次南極地域観測隊に参加し、昭和基地を拠点に1年4ヶ月間、南極で活動してきました。本特集では昭和基地の様子や南極の風景などをご紹介します。
※南極地域観測隊とは、昭和基地をベースにオーロラの観測や厚い氷床の掘削、鉱物の調査や隕石の発見、動植物の調査など、幅広い活動を行うために日本が派遣する調査隊のことです。

■夏の昭和基地
南極は南半球にあるので日本とは季節が逆。日本から船で40日かけて到着した12月中旬は夏でした。夏の昭和基地は茶色い地面が広がり、重機が走り回っていて、まるで工事現場のようでした。写真では、茶色い地面と昭和基地中心部の建物、そしてその奥には海氷に覆われた白い海が見えます。夏でも海が凍ってるなんてさすが南極ですね。

■南極大陸とオングル海峡
昭和基地中心部の目の前には海氷に覆われた白い海がありますが、その向こうには横に長い丘のように見える南極大陸があります。実は昭和基地は南極大陸上にはありません。大陸から幅約4kmの「オングル海峡」を隔てた「東オングル島」にあります。越冬中には南極大陸上で活動するため、オングル海峡を雪上車やスノーモービルで何度も渡りました。

■オーロラ
昭和基地ではオーロラがよく見られます。オーロラ鑑賞は隊員たちにとって楽しみの一つです。色は緑が多いですが、赤や紫のものもありました。形があまり変わらないもの、動きが激しく、見る見るうちに形が変わっていくものなど、日によっていろいろな表情を見せてくれました。

■ペンギン
ペンギンは南極でよく見られる代表的な生きものです。冬の間はあまり姿を見せませんが、夏には子育てのため、南極大陸沿岸や周辺の島にやってきます。人間を怖がらず、好奇心旺盛なので昭和基地まで入ってくることもあります。道を歩いていたら目の前にペンギンがいてびっくりすることもしばしば。

■極夜
昭和基地は南極圏(南緯66度33分以南の地域)にあるので、夏は一日中太陽が沈まない「白夜(びゃくや)」、冬は逆に太陽が一日中登らない「極夜(きょくや)」になる時期がそれぞれ1か月半程度あります。太陽が登らないといっても一日中真っ暗というわけではなく、日中はある程度明るくなります。水平線近くのオレンジ色と空の濃紺とのグラデーションが美しく、とても印象に残っています。

■内陸旅行
越冬中には昭和基地を離れて様々な野外活動に出かけました。写真は昭和基地から約100km離れた南極大陸内陸の「H128」という地点に10泊11日の日程で行った時のものです。H128までは雪上車で荷物を積んだ重いそりを引いて2日かけてたどり着きました。現地は360度全てが見渡す限りの雪原で、とても南極らしいところでした。気温マイナス40度、風速10メートルのとても寒く厳しい環境で、いろいろな屋外作業を行ってきました。

■沿岸旅行
南極大陸上は広大な雪原が広がる単調な世界ですが、大陸沿岸部には雪に覆われていない露岩域や氷山などがあり、変化に富んでいます。9月下旬に4泊5日で昭和基地から大陸沿岸に沿って海氷上を90km南下したところにある「スカーレン」という露岩域に行き、観測機器のメンテナンスなどの作業を行いました。スカーレンまでは海氷の状況を確認しながら雪上車で慎重に進むこと2日の日程でした。スカーレンは海を挟んだ対岸に氷河が海に流れ込んでいる「氷瀑(ひょうばく)」が見える、とても美しい場所でした。

南極での活動を無事に終え、2023年3月23日に紋別に戻ってきました。1年以上に渡る南極生活は、長いようでいてあっという間でした。越冬隊員32名という限られた人員で昭和基地の維持管理を行うため、異業種の隊員同士が協力しあって作業を行うことも多く、チームワークの大切さを実感しました。文明圏と隔絶され、人員の入れ替えも物資の補給も年に1回のみという環境での活動は、けがや病気が命に関わりかねないという緊張感はありましたが、外から誰も入ってこられない場所で手つかずの美しい自然を独り占めにしているような充足感もありました。
ここに書ききれなかったこともたくさんあります。今後、講演会や北方圏国際シンポジウムなど様々な場でお伝えしていきたいと思います。

問合せ:水産課水産研究・国際シンポジウム学術担当
【電話】24-5300

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