■姉崎一馬
Profile あねざき かずま
1946年東京生まれ。
自然写真家であり絵本作家。
大学卒業後、自然保護活動に参加し、日本各地の貴重な自然を写真に収め、自然破壊の現況を取材。自身の著書「はるにれ」で豊頃町のはるにれを世に発信した。
豊頃町のシンボル「はるにれ」。カントリーサインや町の文化財に指定されている「はるにれ」は町民はもちろんのこと、道内にとどまらず、今や道外からの観光客にも親しまれています。そんな「はるにれ」が初めて全国へ紹介されたのが写真絵本「はるにれ」。この本は、自然写真家で絵本作家の姉崎一馬さん(山形県)が描いたもので、9月24日(日)にえる夢館で開催された「はるにれトークandライブ」で「はるにれ」発見秘話についてお話がありました。象徴的な1本の木を探し全国を回っていた20代の頃、偶然はるにれを発見し、見た瞬間「それまで見てきたすべての木を忘れてしまいました。稲妻が走りました」と話しました。今回は、「はるにれトークandライブ」で姉崎さんが発言したはるにれ発見秘話についてご紹介します。
◇昆虫少年だった
「子どものころ、僕は昆虫少年でした」と語った姉崎さん。はるにれを見つけるきっかけは幼少期にさかのぼります。当時父が作ってくれた蝶の標本がきっかけで中学生頃まで昆虫が大好きでした。しかし昆虫好きなまま高校生になると、これまで昆虫採集していた場所がどんどん変わり、今まで生き物がたくさんいた雑木林などが全部つぶされて、住宅地になり、自然が消えていったのです。その現状を目の当たりにした姉崎さんは「僕は自然を守る人になりたい」と思うようになったそうです。
大学卒業後は、日本の壊されていく自然を取材し、残していこうと、アルバイトをしながら全国を歩き回りました。
◇象徴となる一本の木
そういった、自然保護活動をしていく中で、姉崎さんが感じた「日本の自然の豊かさやすばらしさ」を伝えたいと思い、象徴的な大木の一本の木を探し始めました。東北や北海道を1年半ほどかけて巡り、色々な木をカメラで撮って記録していましたがどれも物足りないと思っていました。そんななか、偶然はるにれに出会い、それまで見てきたすべての木を忘れてしまいました。
◇見た瞬間稲妻が走った
はるにれに出会う前日の晩は嵐のような雨でした。姉崎さんは雨上がりの十勝川左岸堤防をゆっくりと海の方から進んでいる時に、遠くに「あのはるにれ」が見えたのです。見た瞬間、稲妻が走ったそうです。
絵コンテで思い描いていた木のイメージとぴったりでした。はるにれがある河川敷はもともとは大森林で、周辺の木を伐採していたようですが、はるにれはあまりにも荘厳で切ることができなかったそうです。
にれ科の樹木は人間の寿命を超えて生き続けます。一度根付いたら、一生そこで過ごしていかなければなりませんが、厳しさや辛さが枝ぶりに出ているのが、このはるにれではないかと、姉崎さん。
◇地球環境を考える入口
最後に姉崎さんは、「これからもはるにれを訪れる人が増え、木の由来や自然、地球環境を考えるスタート地点にしていただきたい」とはるにれに対する思いを語りトークは幕を閉じました。
■町内のはるにれ紹介
◇幌岡のはるにれ
十勝川左岸河川敷に位置し、豊頃町のはるにれといえばこの木が思い浮かぶと思います。樹齢は現在推定約160年とされており、2本の木が一体化したもので、扇形の枝ぶりが見事であり、周囲の環境と調和して、素晴らしい景観をつくっています。平成28年の台風では木の大半が水に浸かってしまいましたがそのような状況でも流されず耐えたこのはるにれは、姉崎さんの言う「象徴的な1本の木」としてふさわしいでしょう。
◇二宮のはるにれ
幌岡のはるにれの他に忘れてはいけない木のひとつ。本町開拓の祖である二宮尊親が入植した歴史的土地柄である二宮地区にたたずむ大きなはるにれ。二宮構造改善センター前で約230年も前から地域を見守り、そこにとどまり続けている、とても貫禄があるはるにれ。幌岡のはるにれとは形や雰囲気共にまた違った印象を受ける木です。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>