■雌阿寒岳の噴火・火山活動の現状
雌阿寒岳は足寄町と釧路市にまたがる活火山で、阿寒摩周国立公園内の一部を形成しています。国有保安林にも指定され、その自然環境は保護されています。
この火山は、気象庁による常時観測が実施されており、近年では平成18年と平成20年に小規模な噴火が観測されました。国は、平成26年9月に発生した御嶽山の噴火を受けて、雌阿寒岳を含む九つの火山を重点観測対象として追加指定しました。平成27年7月には一時噴火警戒レベルがレベル2(火口周辺規制)に引き上げられ、避難道路整備などの噴火対応に向けた機運が高まっています。
雌阿寒岳の最大規模の噴火は、約1万年前に「中マチネシリ」で発生し、約7千万年前から繰り返された噴火によって「ポンマチネシリ」の火山体が形成されました。さらに約1000年前には噴火の中心が南に移り、「阿寒富士」が成長しました。
その後、火山活動の中心は、ポンマチネシリと中マチネシリに戻り、約400年前の爆発的な噴火により「赤沼火口」が形成されています。これまで雌阿寒岳では小規模な噴火が時折繰り返され、平成10年までの150年間で28回の水蒸気爆発が確認されています。
このように、雌阿寒岳は活火山としての特性から、地域にとって重要な自然資源であると同時に、火山活動に対する注意が必要な場所でもあります。そのため、今後も観測と研究が行われ、安全対策の強化が図られます。
■雌阿寒岳の防災
雌阿寒岳火山防災は、1市6町村(釧路市・美幌町・津別町・足寄町・弟子屈町・鶴居村・白糠町)で構成される「雌阿寒岳火山防災会議協議会」により策定された「雌阿寒岳火山防災計画」に基づいて進められています。
想定される噴火は、噴火のシナリオや噴火警戒レベルに基づいています。避難行動は、(1)迅速性、(2)安全・確実性、(3)広域性の三つのポイントを重視しています。このため、火山現象ごとの対応ではなく、噴火シナリオに基づく「段階的避難」を計画しています。
避難は、最も危険とされる地域から段階的に行うことを基本とし、噴火による危険範囲は時間とともに拡大する可能性があります。大規模な一斉避難による混乱を防ぐためにも、避難の安全性と確実性の確保が重要です。具体的な避難パターンについては「足寄町防災ガイドブック(令和5年度改訂版)」をご覧ください。
また、噴火警戒レベルに応じた避難パターンは整理されていますが、実際にはレベル1の状態から、突然レベル3以上の噴火が発生する可能性もあるため、柔軟な対応が求められています。
■雌阿寒岳の避難道路
雌阿寒岳の避難道路として位置付けられている道道オンネトー線、道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線、そして旧町道雌阿寒オンネトー線の約6・8km区間は、すれ違いができない狭隘道路(車道幅員3・5m)となっています。このうち4・8kmは未舗装(砂利)で、冬期間は通行止めとなりますが、警戒レベル2以上が発表された際は避難に備えて除雪を行い、通行可能な状態にします。
雌阿寒岳火山噴火時における地域住民や観光客の安全を守るため、避難道路の整備が必要です。本町では厳しい財政を考慮し、未整備区間である旧町道雌阿寒オンネトー線について、道道オンネトー線や道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線との一連の道路整備を行うため、道道に昇格させることを北海道に要望してきました。
また、未整備区間の多くが阿寒摩周国立公園区域内に位置するため、道路整備には自然公園法に基づく公園事業の内容変更が必要です。これに伴い、環境省と協議を重ね、避難道路整備への理解を求める中で、道路幅員等の変更を盛り込んだ公園事業の変更が平成28年1月に決定されました。
この公園事業の決定を受け、同年3月には道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の起点位置の変更による道路区域の変更が行われ、町道雌阿寒オンネトー線が道道に昇格しました。これにより、避難道路整備に向けた事業化のスタートラインに立つとともに、登山や観光客の安全確保のため早期整備が期待されています。
■自然環境に配慮した避難道路整備
雌阿寒岳の避難道路整備計画において、事業主体である十勝総合振興局帯広建設管理部は、対象地域が阿寒摩周国立公園内に位置し優れた自然環境を有していることから、学識経験者から意見を聴取し、周辺環境に配慮した整備を進めています。
平成28年度からは「一般道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の環境影響に関する懇談会(座長:加賀屋誠一北大名誉教授)」を設置し、意見を求めてきました。また平成29年度からは、より広範囲の意見を聴取し事業を円滑に推進するため、地域の代表者や自然環境団体が参加するワークショップを設置し、環境調査結果や環境影響に関する意見を継続的に求めながら、道路整備計画を進めています。
■オンネトー地区道路環境保全会議
雌阿寒岳の避難道路整備事業における環境保全活動を目的として、令和4年6月に「オンネトー地区道路環境保全会議(代表:雌阿寒自然塾岩原栄さん)」が発足しています。
この会議では、オンネトー地区に関する自然環境保全啓発活動や、北海道が取り組む道路事業に伴う外来種侵入防止活動対策への協力、施工段階で発生する課題に関する意見交換など、目的を達成するために必要な活動を実施していきます。
■足寄高校一日防災授業
本年度の足寄高校一日防災授業が、10月9日に開催されました。この授業は、全国各地で増加する自然災害による甚大な被害や防災対策、地域が抱える防災上の課題を自分事として受け止め、生徒の防災意識を高めることを目的としています。
2年生53人が、現在進められている雌阿寒岳避難道路整備に関連し、防災と環境保全の密接な関係を探究活動の課題に、環境影響に関するワークショップの現地見学会に参加しました。
生徒たちは国立公園内の道路建設予定地を確認し、螺湾川水生動物の観察を行いました。現地見学会に先立ち、10月3日には事前学習が行われ、(1)雌阿寒岳噴火と避難道路、(2)避難道路の整備内容、(3)避難道路建設に伴う環境保全対策のテーマについて講話を受けました。
グループ討議では、現地見学会の学習テーマや疑問点を共有し、現地学習に臨みました。
詳細:役場建設課管理・都市計画担当
【電話】28-3865
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