◆スタッフ×おしゃべり 制作クロストーク(続き)
◇町内の方たちもたくさん出演されていたのが印象的でした
藤:最初オーディションをやってね。50人くらい。でも、みんな照れ屋さんでセリフのある役をやりたいですという子は少なかったです(笑)
瀬川:オーディションは何回くらいやったんですか?
藤:2回かな。鹿追と瓜幕それぞれで開催して。セリフのある役を希望してくれた人たちの中で、積極的な子たちともう一度会ってお話をして配役を決めました。
藤:照れ屋といえば、劇中で町民の写真を撮り集めるシーンがあって。実際に町民の皆さんの写真を100枚撮ることになり、スチール担当のスタッフが撮って回ったんですが、皆さんシャイでなかなか集まらなくて(笑)。でも町民の方が声を掛け合ってくれてね。
瀬川:僕はあの写真を見て感動しましたよ。あの写真1枚1枚に「鹿追のしあわせ」が写っていて。
藤:おもしろかったのが、「数十年ぶりに手をつないだ」というご夫婦が結構いたりね(笑)
◇「結婚式のシーン」もたくさんのエキストラの方々に協力していただいていましたね
藤:150人くらい協力いただいたと思います。瓜中・鹿中・鹿高の吹奏楽部にお願いして、演奏のシーンを練習してもらって。
瀬川:ヴァージンロードのシーンでは、エキストラの方々の顔が全員映るように意識しました。
エキストラの演出をおろそかにするとつまらない映画になるんです。役者さんたちのど真ん中にエキストラの子どもがいて。子どもって純真なんで芝居ができないことが多いんですけど、とてもいい表情をしてくれて、すごく素敵なシーンになりました。撮影中、風が強かったんだけど逆に画的に効果があって。
篠尾:そうそう。それがまた良くて。草がなびいたり、花吹雪が舞うから。
須永:スコールのあとの虹とかね。あれもすごかったね。
瀬川:麻衣(山木雪羽那)が踊るシーンの撮影の時に、大雨が降ってしまって。みんなで待機していたら、突然晴れてきて、とても綺麗な虹が出たので、急いで虹をバックに撮影しました。
須永:「あのシーンの虹って合成ですよね?」とよく言われました(笑)
瀬川:僕は四季折々の夫婦山の景色が好きで。夫婦山の景色を雄二(中原丈雄)と敬子(賀来千香子)の関係に置き換えたいという思いがありました。
自然の力を感じたエピソードがあって。クランクインしたのが夏だったんですが、スケジュール上、夏に秋のシーンを撮らなければならなくなり、デントコーンの前で中原さんに秋の格好してもらったんです。だけどそれがものすごく違和感があって(笑)。自然はウソつけないなと思いました。きちんと待っていれば秋になるんだからと思い、本物と向き合うために、秋に撮り直しました。
須永:実は映画館でぜひ観てほしい理由があるんです。この映画はシネマスコープという、通常の映画の規格よりも画面がすごく横長で大きい画角になっているんですよね。「十勝の大自然は普通の画面サイズじゃ収まりきらないから、そのサイズにしようよ」となって。
瀬川:大地を撮影するときに横広の画面じゃないとうまく収まらなくてね。
篠尾:道外の方を十勝に連れてくると、日勝峠を越えた瞬間に目の前に飛び込んでくる十勝平野の景色に本当に感動してくれるんです。この作品もテレビじゃ観られないような迫力の景色が観れるので、ぜひ映画館で見てほしいですね。
須永:試写会を観た地元の方たちから「あれってどこの景色なの?」って聞かれることが多くて。「もちろん鹿追だよ」と教えると、「こんなに綺麗なんだ」って言ってもらえることが多かったですね。住んでいる人にとっては当たり前の景色でも、それはなかなか見ることができない景色なんだよって映画を通じて伝わればいいな。
藤:映画の宣伝部が12月16日に開催した鹿追芸術祭に来てびっくりしていました。全部町の人が主体的にやっているから。「地方の映画は数あれど、これだけ自分たちの映画として広めようと動いている人たちは初めてです。どうしたらここまで1つの映画が町民の人たちの中に入り込んでいけるのか」と話していましたよ。
須永:監督も撮影前から、ずっと鹿追に住んでいるからね。もう町民だよね(笑)
◇ささえ隊の皆さんへ
瀬川:ささえ隊なくしてはできなかった映画だと思います。家族のように接してくれて親戚がそこらじゅうにいる感じ。映画を撮り終わってもまだまだ支えてもらっていますし、感謝しかないです。
須永:温かな炊き出しは、スタッフやキャスト一同、本当に喜んでいました。テントの設営や人手がいるような時も、隊員の皆さんが中心となって一気にわーっと組立ててくれて。僕たちよりも年上なのにはるかに力強くて。スタッフの滞在に必要な家具や家電もささえ隊のみんなに声をかけたら助けてくださいました。瓜幕に建てたオープンセットの所有地の方も、土地を快く貸し出してくださって。
精神的にも物理的にも本当に支えてもらいました。これ以上の感謝はないというくらい。
藤:映画ができたのは本当に皆さんのおかげです。鹿追の良さを知ってもらい、町に遊びに来てもらうためには映画を広めなければならない。これからこの映画をたくさんの方に観ていただけるよう一生懸命全力を尽くしますので、楽しみにしていてください。
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