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しかりべつ湖

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北海道鹿追町

今月は、筆者が然別湖へ来るきっかけをお話したいと思います。

私は北海道出身ではありません。いわゆる都会と言われるビルが立ち並ぶ街で育ちました。中学生の時、7月に修学旅行で然別湖を訪れたのがこの地を知るきっかけでした。
昼間は湖でカナディアンカヌーを強雨の中で体験し、雨に耐えながら初めてのカナディアンカヌーの操船にあたふたしていたため、風景を眺める余裕はどこにもありませんでした。
ホテルでの夕食後に出かけたのが、然別湖ネイチャーセンターが主催する『ナイトウォッチング』でした。出発の際に明かりの付く物は携行しないようにと案内があり、生徒たちは肝試し感覚でのスタート。然別湖の温泉街を離れると街灯もなく、まずその街灯が無い土地があることにとても驚きました。街灯ばかりの土地で暮らし、暗闇を知らなかった人間にとっては人工の明かりが無い世界、暗闇は何も見えないのかと思いきやそうではなく、空の黒、湖面の黒、稜線の黒、森の黒とそれを見分ける事が出来るほど、黒色というのは何色もあるのだと色の幅を知りました。
とは言え、昼間の明るさよりも周囲が見えづらいので周囲の様子を把握するべく嗅覚や聴覚にも集中するようになり、歩みを進めると森から漂う香りにも変化が…森の香りとはこんなにもバラエティーがあるのです。
今思えば、木々の香りが旺盛に放出される夏、ヤマザクラ、ナナカマド、ミヤマハンノキ、トドマツと個々に醸し出している香りが変わります。特に香りの濃い季節だったからこそ気づけたのでしょう。しかし当時の私は不思議でたまりませんでした。

歩みを進め開けたところに出ると然別湖の上空には想像を遥かに超える星空が広がっていました。その星の数の多さに、天の中央を流れる天の川の色の濃さに言葉を失い、地球という船の窓から宇宙を直接見ているようで、瞬く星の輝きにただただ見とれるばかり。お喋り好きな中学生たちが静かになっていました。
ガイドさんに促され湖面を覗いてみるとなんとそこにも天の川が移りこんでいて、頭の上にも足元にも天の川というその壮大な夜景に驚きました。ツアーが終了しホテルの部屋に戻ってからも、ナイトウォッチングで体験したさまざまな出来事に頭の処理が追い付かず、夜遅くまで興奮していたのを憶えています。

人工の灯りから離れ闇夜に包まれた然別湖。
そこで出会えた夜はとても強い印象を私に残し、いつしかこの湖で過ごすこととなりました。
今でも、あの時と同じように然別湖は天の川を湖面に映しこんでいます。

写真・文:然別湖ネイチャーセンター
【URL】https://www.nature-center.jp

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