小学生のころから佐倉で育ち、現在は市内に窯を構える陶芸家・和田的さん。昨年、佐倉市立美術館での初の個展「陶芸家 和田的展 WALK ON THE EDGE」が開催されました。
20代から数々の陶芸展で受賞するなど、若くしてその才能を開花させ、地元佐倉を拠点に、陶芸界の第一線で活躍する和田さんの作品の魅力と創作の原点に迫ります。(→2・3ページへ)
■Profile
2001年に文化学院陶磁科を卒業後、市内に窯を持つ陶芸家・上瀧勝治に師事。2005年に独立し窯を築く。2007年には、28歳の若さで、新作陶芸展において日本工芸会賞を受賞。日本伝統工芸展、菊池ビエンナーレ、日本陶芸展など数々の陶芸展で受賞し、高い評価を得ている。
磁土をろくろで厚くひき、彫刻のように削り出す技法から生まれる、エッジのきいた直線と曲線、光と影のコントラストが特徴。
■佐倉でつなぐ伝統-挑戦を忘れず、自分の知識と技術で感動を生み出したい
◆Talk event 師と語る 和田的×上瀧勝治
和田さんの師であり、磁器の生産地として有名な佐賀県有田町の出身で、佐倉に窯を構える陶芸家・上瀧勝治(うわたきかつじ)さんと、師弟の思い出や作品について語り合いました。(令和5年11月12日)
▽-師との出会い
和田:18歳のころ、将来何をしたいか考えたとき、「一生を通して追求できる仕事をしたい」と思いました。元々ものづくりが好きだったこともあり、偶然チラシを見て上瀧先生の陶芸教室に伺ったとき、先生が作った大きな白い壺を見て、黒っぽい色の陶芸のイメージが覆され、自分も白いものを作ってみたいと思ったのが、陶芸の道に進んだきっかけです。
上瀧:初めて会ったときは、随分若い子が来たなという印象でした。私の窯で4年間ほど勉強しましたが、その間、直接教える以上に、私の姿を見て、よく学んでくれたと思います。
▽-独創的な発想と技術
上瀧:《茶盌(ちゃわん)「御神渡(おみわた)り」》2020年(写真2ページ上中央)は、器面に穴を開け、その穴に釉薬(ゆうやく)を象嵌(ぞうがん)する「蛍手(ほたるで)」という技法を使っていますが、こんなに大きな穴を開けるのは有田でも見たことがない。発想の独創性と、それを表現する技術に驚かされます。
和田:伝統的な技術を基に、私なりの手法も駆使して表現に反映させています。《白器(はっき)「ダイ/台」》2017年(写真2ページ右上)では、彫ることで生まれたエッジに落ちるシャープな陰影の美しさと、磁器土の美しさを際立たせるため、表面に釉薬を使用せず仕上げました。当時、そのような焼きしめの磁器作品は珍しかったのですが、先生に見せた瞬間、「こう来たか。いいね」と言われ、背中を押していただきました。
▽-師から弟子へ 佐倉でつなぐ伝統
上瀧:私自身も和田君も、磁器を地場産業としない佐倉だからこそ、伝統にとらわれず、新しいことに挑戦できた面があったと思います。また、私は有田出身で、佐倉に知り合いはいませんでしたが、佐倉で出会ったいろいろなかたとのつながりで育てていただいたと思っています。
和田:自分にとって「伝統」とは、上瀧先生が受け継いできた約400年の歴史を持つ有田焼の技術であり、先生の仕事への姿勢が、今も自分の指針になっています。作品では、光と影、生と死といった、相対する、しかしどこかでつながっている世界を多くテーマにしています。そうした、これまでの経験から、今、自分が感じていることを、できる技術をもって表現していくことで、伝統をつないでいければと思っています。
◆Talk event 和田的×中田英寿(元サッカー日本代表)×佐藤卓(グラフィックデザイナー)
引退後、日本の伝統文化を世界に発信してきた中田英寿氏の活動の一つ「REVALUE NIPPON PROJECT」でタッグを組んだ3人がトークイベントを行い、抽選に当たった約100人の観客を前に、プロジェクトへの思いや「伝統」について語り合いました。(令和5年11月25日)
◆Interview 和田的×WALK ON THE EDGE
▽-陶芸家としての25年を振り返って
今回、佐倉市立美術館で個展を開催するにあたり、ご協力いただいた皆さんに感謝申し上げます。25年分の作品、120点を一堂に展示できることは貴重な経験であり、私自身、学生時代から今までを振り返る良い機会となりました。
思えば、20代のころは何事にも全力疾走で取り組み、その経験から、自分が何をやりたいのかだんだんと明確になってきたように感じます。2007年に、文化庁新進芸術家海外研修員としてパリに留学した際には、歴史的なものから現代のものまで、彫刻や銅版画を学び、陶芸を客観的に見つめ直せたことが、今につながっています。
「一生を通して追求できる仕事」を探し、数ある職業の中から陶芸家に興味を持ったのは、小学生のころ、佐倉草ぶえの丘で陶芸を体験し、身近に感じていたからではないかと思います。そんな思い入れのある佐倉で窯を築き、地元の多くのかたに応援していただけることを幸せに思っています。
▽-これからの道のり
陶芸作品の良さの一つは、見て楽しむだけではなく、日常の中で使うことができる点にあると思います。手に取ったかたが、観賞用にするのか、それとも花器などとして使うのか、自由に想像していただけるよう、その中間をあえて狙って制作しています。
また、特に芸術の分野は、ついつい自己表現ばかりになり、ともすれば自己中心的な世界になってしまいがちですが、いろいろなかたとの出会いの中で、芸術家として大切なことは、芸術というフィルターを通して、自分の知識と技術で人を楽しませ、感動を生み出すことであると感じました。
何か月も時間をかけ、心を込めて作った作品を手放すとき、実はとても寂しい気持ちになります。しかし、皆さんにいつも新しい感動をお届けできるよう、挑戦を忘れず、この道を追求していきたいと思います。
■佐倉市ブランドメッセージ 佐倉で才能が開花する
日本遺産にも認定された城下町・佐倉。幕末には、開明的な佐倉藩主 堀田正睦のもと佐倉順天堂が開かれ、多くの優秀な人材を輩出しました。
佐倉に根付く「好学進取」の精神は、現代でも、スポーツや芸術、芸能など、さまざまな分野で活躍する人を育んでいます。
豊かな自然と都市の利便性が調和するまち佐倉で、あなたの夢が、才能が、大きく花開くよう応援します。
■動画でも魅力をお届け!「陶芸家 和田 的の歩く道~ WALK ON THE EDGE ~」
▽Weekly さくら(佐倉市広報番組)
放送予定:1月29日(月)~ 2月4日(日) 午前10時~ / 午後10時~
ケーブルネット296( 地上デジタル10ch・デジタルCATV301ch)
▽さくら動画配信(佐倉市YouTube)
配信予定:2 月5 日(月)~
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