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学芸員が選ぶ 今月のイッピン

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千葉県千葉市

■板倉鼎(いたくらかなえ)
《雲(くも)と秋果(しゅうか)》
油彩、キャンバス/1927年(昭和2年) 松戸市教育委員会蔵
板倉鼎は、幼少期から青年期にかけてを松戸市で過ごした洋画家です。結婚したばかりの妻で、後に画家となる須美子(すみこ)を伴い、1926年からパリに留学して研鑽を積みますが、1929年に惜しくも28歳の若さで客死しました。
独創的な裸婦像で画壇の寵児(ちょうじ)となった藤田嗣治(ふじたつぐはる)のように、パリの地で画家として認められようとした鼎が、まず独自の表現をつかんだのは静物画においてでした。
本作でも、窓辺のデスクに並んだ果実は何やら神秘的な雰囲気を醸し、静謐(せいひつ)で澄み渡った空気が、忘れ難い印象を残します。
鍵となるのは、タイトルにもある「雲」。鼎にとって雲は重要なモチーフで、静物画に、そして後年の人物画においても、画面に異世界を共存させてシュールな感覚を生む役割を果たしています。
ナイーフな画風で高く評価された須美子も、娘たちも相次いで亡くなったため、板倉夫妻は評価の機会に恵まれずにきましたが、このたび地道な顕彰を続けてきた松戸市教育委員会の全面的なご協力のもと、その画業を総覧いたします。
早世した2人の、いつまでも若くみずみずしい作品世界を、ぜひご覧ください。
西山学芸員
「板倉鼎・須美子展」にて6月16日(日曜日)まで展示中です。

問い合わせ:市美術館
【電話】221-2311【FAX】221-2316

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