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学芸員が選ぶ 今月のイッピン

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千葉県千葉市

■伊藤若沖(いとうじゃくちゅう)《旭日松鶴図(きょくじつしょうかくず)》
1755年から56年(宝暦5年から6年)頃 絹本着色 一幅
摘水軒記念文化振興財団蔵

旭日のもとに立つ、二羽の美しい鶴。なじみ深い「鶴は千年、亀は万年」の言葉通り、鶴は古くから長寿を象徴する吉祥(きっしょう)の鳥とされてきました。
18世紀の京都で活躍した伊藤若冲(1716-1800)による本作も、旭日・つがいの鶴や松・梅といったモチーフが夫婦揃っての長寿や繁栄を祈念するものです。スタンダードな図柄ですが、松の幹は蛇の鱗のような樹皮に覆われ、二羽の鶴は奇妙なポーズで絡みあうように描かれるなど、個性的な描写が魅力的です。圧巻は羽の描写で、一本一本、白い顔料による極細の線を丁寧に引きつつ、一部を絹地のまま塗り残すことで絶妙な透け感を演出しています。
孤高の天才といったイメージの強い若冲ですが、本作は京都の鹿苑寺(ろくおんじ)が所蔵する中国絵画を参考に描いたことが分かっており、勉強熱心な面も伺えます。
開催中の「江戸絵画縦横無尽!摘水軒(てきすいけん)コレクション名品展」では、本作を初めとする江戸時代のパワフルで魅力的な花鳥・動物画が大集合します。
暑い毎日が続きますが、ぜひ美術館で絵の中の生き物と触れ合う、癒しのひとときをお過ごしください。

○松岡学芸員
「江戸絵画縦横無尽!摘水軒コレクション名品展」(6月28日から8月25日)にて展示中です。

問い合わせ:市美術館
【電話】221-2311【FAX】221-2316

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