市美術館コレクション探訪

4／10

■歌川国芳「山海愛度図会　耳がかりたい　上総あわびとり」
大判錦絵　1852(嘉永5年)
描かれる人物は、「片はずし」と呼ばれる髪型から、武家の女性であることがわかります。眉を剃り、お歯黒をしているところからも年配の奥女中などと考えられます。その意味深長な表情や題名から、聞き耳を立てて何か詮索をしようというところでしょうか。この「上総あわびとり」のこま絵は、国芳の娘・芳とりによるもので、あわびを獲る海女が描かれています。「磯のあわびの片思い」のことわざも思わせることから、何か恋愛話に聞き耳を立てているという想定かもしれません。上総の名物でもある鮑は、日本橋の魚河岸に運ばれ、江戸市中で食されていました。
(常設展示室にて6月6日(火曜日)から7月2日(日曜日)まで展示)