藤田嗣治
《夏の漁村(房州太海)》昭和12年(1937)
千葉市美術館蔵
藤田嗣治(1886-1968)の祖父は、明治のはじめ安房に置かれた長尾藩本多家の家老職でした。このため、房州は藤田にとってゆかりの地となります。パリで画家として成功した彼が太海を訪れたのは、1935年8月と翌年の3月。彼は同地でスケッチを描き、油彩画は当時東京にあった彼のアトリエで制作しました。この作品は画家の宿として知られる江澤館ちかくが描かれています。太海を題材とした作品は5点ほど制作され、37年に制作されたこの作品は最後のものと考えられますが、そのほかの油彩画は現在所在がわかりません。55年、彼はフランスに帰化しました。そのときのメモには東京で生まれたことを知りながら、自分が「日本千葉県」の生まれであると記しています。
(常設展示室にて4月3日から6月2日まで展示)
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