菊川英山
《風流子宝六歌仙 僧正遍照》
文化7-8年(1810-11)千葉市美術館蔵
母子の姿を六歌仙になぞらえて描いた作品です。僧正遍照は平安時代の僧侶で、歌人でもありました。和歌は、花の名前に惹かれて手折っただけなのだから、私が(女性に)堕落したなどと言ってくれるな、という古来有名な歌です。市松模様の粋な着物に身を包んだ若い母親が、縁台の上で幼児を抱いています。子どもは片手を額に当て、もう一方の手は前に伸ばして何かに興味を惹かれている様子です。可憐な母親は、女郎花(おみなえし)を詠んだ艶やかな和歌にふさわしいでしょう。幼児の頭に着物が半ばかぶっている点が、遍照の僧形をおもわせます。7月の常設展示では「浮世絵に描かれた子どもたち」をテーマに展示します。ぜひ愛らしい子どもたちを眺めにいらしてください。
(常設展示室にて8月4日まで展示)
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