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南房総市の民話

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千葉県南房総市

■「お定狐(さだぎつね)」 第205話 生稲謹爾(いくいなきんじ)
昔むかし、富浦町豊岡の坂ノ下(さかのした)に鎮座(ちんざ)します乙羽の森の稲荷様(いなりさま)に、「お定(さだ)」と呼ばれる白い狐(きつね)が棲みついていました。
どうして、お定と名付けられたか謂(いわ)れはわかりませんが、神通力(じんつうりき)を持った狐でしたので、沢山の人を化かして困らせました。白い狐ですから、色白の美女に化けるのが上手で、狐と気付かず、ちょっかいを出した地元の若い男たちを、ひどい目に合わせることもありました。なにしろ、お定狐は人と会う度に顔形が全く違った美女に化けたのですから始末が悪く、そのために、月に四~五回も化かされた者がいたというのです。
お定狐は魚が大好物でしたから、坂ノ下の湊(みなと)に漁船が帰ってきますと、必ず近づいて漁師を化かし、魚を騙(だま)し取ると、化けた着物の袂(たもと)の中に隠して棲家(すみか)の稲荷様の祠(ほこら)へ運び、食べたそうです。お定狐は皆に嫌われた悪い狐でしたが、地元の人たちは決していじめたり懲らしめたりしませんでした。白い狐は神の使いで、霊力(れいりょく)を持つと信じられていましたから、祟(たた)りを恐れたのです。

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