■市指定有形文化財(絵画)
『渡唐天神画像(ととうてんじんがぞう)』
所在地/府中(ふちゅう)687-1(三芳地区)
所有者/宝珠院(ほうしゅいん)(真言宗)
□伝説から生まれた中国風の天神さま
府中の宝珠院は、かつて安房地域の真言宗を統括(とうかつ)する立場にあったお寺であり、数多くの古文書や絵画を保存しています。その中の一つ「渡唐天神画像」には、梅の枝を持ち、仙人(せんにん)のような中国風の服をまとった菅原道真(すがわらのみちざね)(845~903)が描かれています。
菅原道真は、平安時代に優秀な政治家、学者として活躍した人物ですが、謀略(ぼうりゃく)により左遷(させん)され、不遇(ふぐう)の晩年を迎えたことから、怨霊(おんりょう)になったと考えられるようになり、後世の人々は、天神として祀 (まつ)るようになりました。
史実の道真が、唐(とう)(現在の中国)へ渡ったことはありませんが、道真の死から400年ほど後の14世紀になると、禅宗(ぜんしゅう)の僧侶たちの間で「天神(道真)の霊が、空を飛んで中国へ渡り、禅を会得(えとく)した。」という渡唐天神の伝説が生まれました。
宝珠院の「渡唐天神画像」は、この伝説を題材にした絹本(けんぽん)の掛け軸であり、作者は、15世紀代の関東地方で活躍した鎌倉建長寺(かまくらけんちょうじ)の画僧(がそう)(絵の制作を専門とする僧侶)、祥啓(しょうけい)(生没年不詳)です。
洗練された筆致(ひっち)で描かれた本作は、室町時代の鎌倉と安房の文化的な繋がりを示す資料のひとつです。
□公開
非公開
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