文字サイズ
自治体の皆さまへ

篠原先生の「幸福人生のレシピ」

30/37

千葉県大多喜町

「NPO法人自殺防止ネットワーク風」代表を務める篠原鋭一先生が、人生を楽しくするレシピをご紹介します。

■まごころのバスガイドになる
コロナ禍が落ち着きを見せる中、今年社会人になった若者たちも、それぞれの職場に慣れるため、先輩のあとを一所懸命追いかけ、時には落ち込むこともあるにちがいありません。
夢叶ってバスガイドになったE子さん(二十二歳)もその一人です。
東北地方の山村で育ったE子さんが小学生の頃からずっと持ち続けた夢は観光バスのバスガイドになること。その夢は二年前東京のH観光バス会社に採用されて実現したのですが、コロナ禍で乗務ができません。そして…。今年の春。E子さんは夢の添乗を果たします。ところが喜びに満ちたE子さんが思わぬ壁にぶつかりました。それは方言と訛(なま)りです。標準語(共通語)で話そうと思えば思うほど訛りが出てスラスラと進みません。やがてあちこちでお客さまがクスクスと笑い出して、時には大爆笑…。
E子さんは悩みます。東北でもとりわけ方言と訛りの強い土地で育ったE子さんの発音を、共通語でスラスラと話すことは容易なことではありません。黄昏時になると故郷のことが思われて涙が落ちます。
ある日のこと。一日の観光が終わり、お客さまを送り終えようとしたとき、一人のおばあさんが近づいて来て告げたのです。
「ガイドさん。今日は本当にありがとう。私も東北の人間でさ、東北訛りのガイドが聞けてとてもとてもうれしかったさあー。なんだか嫁に行った娘に案内されているようでね。ほんとうにうれしかったよお!ありがとうね。あんたはまごころのバスガイドさんだよ。訛りがあった方が暖かくてさ、お客さんたちが喜ぶと思うのさね。わたしがそうだったよ。みんな笑ってたが、あんたの訛りをバカにして笑ったんではないよ。うれしかったのさな。娘に会えたような気持になってさ、うーんとうれしかったのさね。いいかい。なんも恥かしがることねえ。そのまんまでええでべさ!もう一度言っておくよ。あんたはまごころのバスガイドさんだよ。ありがとうね!」
E子さんの瞳は涙いっぱいです。去っていくおばあさんの背をみつめながらE子さんは誓いました。
「うんだな。若い女の子なら妹が来たと思うべ。おばあちゃんが乗ってこられたら故郷の母ちゃんが来たと思うことにするべ。よし決めた。私は“まごころのバスガイドになるよ!”」
おばあさんのような方を「和顔愛語(わげんあいご)の人(ひと)」とおよびするのです。
新社会人のみなさん、新しい出会いを大切にして下さい。

▽篠原鋭一(えいいち)氏
1944年兵庫県生まれ。駒澤大学仏教学部卒業。
千葉県成田市曹洞宗長寿院住職。曹洞宗総合研究センター講師。
同宗千葉県宗務所長、人権啓発相談員等を歴任。
「NPO法人自殺防止ネットワーク風」代表。
公立の小学校・中学校・高等学校を巡り「いのちを見つめる」課外授業を続けている。
「生きている間にお寺へ」と寺院を開放。「少年院」「拘置所」で特殊詐欺犯罪の結末を説き続けている。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒104-0061 東京都中央区銀座3-4-1 大倉別館ビル5階

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU