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サーモントラウト陸上養殖 商業プラントの操業開始に向けて(2)

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千葉県富津市

●十河 哲朗(そごう てつろう)さん
昭和59年生まれ。父の実家が香川県で、幼少期から釣りに出かけたり、魚を飼育したりと、魚類に親しんで育ちました。
京都大学農学部卒業後、三井物産に入社し、自ら希望して水産物の輸入販売担当となり、世界の漁場とその現状を見てきました。
水処理大手メーカーから独立し、平成25年にFRDジャパンを創業した辻洋一さんと、水分析を手掛ける共同創業者の小泉嘉一さんと出会い、三井物産からFRDジャパンへの出資を実現しました。
その後自身もCo-CEOとして参画し、陸上養殖で未来の魚食文化を創造するべく、奮闘しています。

◆“海に依存しない”陸上養殖で未来の魚文化を創造する
FRDジャパンは、平成30年から埼玉県さいたま市と木更津市のサーモントラウト実証実験プラントで、独自の閉鎖循環式陸上養殖により、サーモントラウト“おかそだちサーモン”を養殖してきました。
さいたま市で卵をふ化させてから約半年間育て、その後木更津市で生魚になるまで約半年間育てて出荷することで、海に依存せずにサーモントラウトが生産できることを実証してきました。
5年にわたる実証実験を経て、今回、富津市に建設する商業プラントでは年間3,500トン規模のサーモントラウトを生産・販売する予定です。

◆おかそだちサーモンを出荷するまで
(1)発眼卵をふ化させます。
(2)ふ化後、稚魚から育てます。
(3)成長段階に応じて大きな水槽に移します。
(4)出荷前の魚は3kg前後まで成長しています。
(5)水揚げ後1匹ずつ丁寧に活け締めし、しっかり血抜き・冷やし込みを行ってから出荷します。
(6)新鮮なサーモンはスーパーや飲食店などで販売されます。

◆(環境に優しい)おかそだちサーモン気になる「味」は?
(1)消費地までみなぎる鮮度感
スーパーなどで売られているサーモンは大部分が輸入品です。輸入品は魚を締めてから消費者に届くまで時間がかかり、鮮度が落ちてしまうこともあります。
おかそだちサーモンは締めた当日に出荷ができ、一度も冷凍することなく、高い鮮度を保ったまま消費地へ届けられるため、凝縮された旨味と弾力のある身質を楽しめます。

(2)毎日が旬の生サーモン
「おかそだち」に季節は関係ありません。水温を15℃前後に保った水を循環させて一年中サーモンに適した環境を維持しているため、毎日が旬の生サーモンです。

(3)ちょうどよい脂乗り
市場に出回っているサーモンは大きく分けて2種類で、「サーモントラウト」と「アトランティックサーモン」です。
「おかそだち」はサーモントラウトであり、少し白めのサーモンがアトランティックサーモンです。アトランティックサーモンと比べると適度に脂が乗り、さっぱりしているため、幅広い年齢層に好まれています。

◆FRDジャパンが開発した新しい陸上養殖「閉鎖循環式陸上養殖」
サーモンの養殖に適しているのは水温15℃前後の波が立たない入江と言われ、流通する食用サーモンのほとんどが、この条件を満たすノルウェーとチリの海面で養殖されています。
しかし、世界的な人口増加とともに、サーモンの需要は右肩上がりで伸びており、現地ではすでにサーモンを養殖できる海面スペースがなく、さらには海面に養殖場をつくりすぎたことにより、海の環境汚染が深刻な問題となっています。
これらの問題を解決するためにFRDジャパンが取り組んだのが「新しい陸上養殖」でした。これまでも陸上養殖を行う業者や企業はありましたが、既存の陸上養殖には、解決すべき課題もありました。

◇既存技術との違いは?

一般的に行われる循環型の陸上養殖は、硝酸のような除去できない汚染物質の蓄積を防ぐため、最低でも1日約30%の海水を替える必要があります。さらに、取り入れた海水はサーモンにとっての適水温である15℃まで冷却させなければならず、水温調節にかかる電気代が大きな課題となっていました。
この課題を解決するためにFRDジャパンが編み出したのが「閉鎖循環式陸上養殖」という独自技術です。
これは水の汚染物質をバクテリアの力で除去し、蒸発などで失われる水分を補給することで、使用した水を再利用できるという、水替えに伴う諸問題を一気に解決する新技術です。

◆閉鎖循環式陸上養殖の4つのメリット
◇地球に優しい
閉鎖循環式陸上養殖は、既存の陸上養殖とは異なり、独自のろ過システムで水を循環させて養殖しています。
海や川を汚さない、地球に優しい持続可能な養殖手法です。

◇海水冷却コストが不要
水替えが必要とされる従来の陸上養殖では、海から海水を引いてきて、サーモンにとっての適水温である15℃まで冷却してから水槽内で循環させるため、これにかかる電気代が課題となっていました。
閉鎖循環式陸上養殖では、海水冷却コストが不要となるため、電気代を大幅に削減できます。

◇「いつでもどこでも」養殖できる
閉鎖循環式陸上養殖は、海や川を必要としないため、消費地の近くで養殖し、最小限の輸送コストで届けることができます。
また、自然や災害の影響を受けないため、台風、病原菌のまん延にも左右されません。

◇魚病の感染リスクを大幅に減少できる
閉鎖循環式陸上養殖では、天然海水を使用せず、飼育水を循環させながら養殖しています。
魚病の原因になる海水からのウイルスや細菌の侵入がないため、対処するための抗生物質を使用せずに安定生産が可能になります。

おかそだちサーモンは「海を汚さない、地球に優しいサーモン」として、国内の陸上養殖サーモンでは初となるASC認証を取得しました。
ASC認証とは、水産養殖管理協議会(ASC)が認定する環境と社会への影響を最小限にして育てられた養殖の水産物である証のことであり、国際社会環境認定表示連合(ISEAL)の適正実施に沿って策定された基準をクリアした漁業者が取得できるものです。
ASC認証を取得した商品には、「責任ある養殖水産物」であることが一目でわかるよう、ASCラベルが貼られています。

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