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文化・芸術の秋

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千葉県山武市

◆『森の恵み』「日向の森」~森地区を巡って~
過ぎようとする夏を呼び止めるかのようにセミがその生命の限りを響かせる8月下旬、「日向の森」の一角に足を踏み入れると広がるのは、ここは軽井沢?と錯覚するほどの美しい落葉樹林。さらに奥へ進むと、そこにはこの地域特有の山武杉林が広がります。国産木材需要の低迷などにより一時は荒廃の一途をたどったものの、市内外からの有志の手によって今、確実に生まれ変わりつつあります。7年前からこの森で森林整備や音楽イベントなどを行うNPO法人CHARCOALandAXE(チャコール・アンド・アックス)。活動に協力する歴史民俗資料館友の会の高柳正彦さんも加わり、森の中を歩きながらお話を伺いました。
「日向の森の周辺は、典型的な谷津(やつ)(谷状の湿地)と呼ばれる地形で、森林からの湧水がこの湿地やそこに作られた田畑を潤しています。今、谷筋から染み出ている地下水は、その上の台地に降った雨が土中を巡り、およそ12年の年月を経て出てきたものと言われています。
雨水を様々な植物や豊かな土が受け止め、表層を一気に流れることなく土中をしっかり巡ることが、湧水の水質や水量に影響します。令和元年には旧日向小学校を孤立させた大雨水害もありましたが、これらの対策としてインフラ整備ももちろんですが、水を掴(つか)んで貯留してくれる森林の機能を十分に発揮させる適切な〝手入れ〟が重要だと感じています。」そう話すのは、代表の栗原幸利さん。

~森と人の営み~
お話は続きます。「確かに令和元年の台風で溝腐れ病の山武杉がたくさん倒れました。しかし災害という言葉で閉じられてしまいがちな事も、実は森が巡りを取り戻そうとする自然の自浄作用なのかもしれません。図らずも空がひらけ、陽が射したおかげで新たな植物が芽吹いている。こから私たちは何を読み取り、どう関わっていくのか。生態学的な事も勿論ですが、これまでの歴史的・文化的背景も諸先輩方から学びつつ探っていければと思っています」。
高柳さんは「作田川は田んぼを作る川と書きます。日向の森から流れでた水が作田川に入り、この辺りの稲作を支えたのでしょう。森地区に、金ケ谷(かながやつ)・清水谷(しみずやつ)・観音谷(かんのんやつ)などの小字名(こあざ)として残っているのはその証です。昔の人々の豊かな暮らしがわかる文化財が多いのも、この地域の特色の一つ」と述べています。

~森で遊び、学び、結び、喜び~
現在、年間約二千人以上が日向の森に訪れるそうです。毎月行われる森林整備をはじめ、これまでに行ったイベントは自然体験プログラム、和太皷や雅楽の演奏会、日本酒を仕込む木桶を作るための丸太を人力で森から曳(ひ)き出す[木遣(きや)り祭り]に至るまで多岐にわたり、この木遣り祭りには世界一予約が取れないレストランと言われているデンマークの[ノーマ(noma)]のスタッフが来訪されたとも。この森で沢山の人が遊び、学び、結ばれ、歓喜する―。そんな多くの可能性を感じさせる山武市の宝物のひとつが、ここにはありました。

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